京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 COSER Center for On-Site Education and Research 附属次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
フィールドワーク・レポート

ミャンマー・バゴー山地のダム移転カレン村落における 焼畑システムの変遷と生業戦略

設置したカメラトラップ

対象とする問題の概要

 ヒョウ(Panthera pardus)やゴールデンキャット(Caracal aurata)といった食物ピラミッドの高次消費者である食肉目は、その生息密度が地域の他の動物種の生息密度に大きな影響を与えるという点で、生態系内の重要なアクターである。近年各地で食肉目の個体数減少が報告されており問題となっている。その原因として生息地の分断や消失、さらに地域住民とのコンフリクトなど、人間活動の影響が指摘される[Henschel et al., 2011]。いずれの原因も地域ごとに複雑な要因が絡んでおり、多角的な視野からの研究が必要とされる。カメルーンのような熱帯雨林地域での食肉目の生態学的研究は、サバンナ地域での研究に比べ数がまだ少なく、本研究の調査地であるンキ国立公園とブンバベック国立公園でもそうした研究はまだなされていない。

研究目的

 調査地であるカメルーン南東部では、これまで食肉目を対象とした生態学的研究が行われてこなかったため、今回は基礎的な野生動物の情報を集めることを主題とした。本研究では、カメルーン南東部のンキ国立公園とブンバベック国立公園内に生息するヒョウおよびその他食肉目を調査対象とし、カメラトラップを用いた個体識別、個体数密度、行動圏推定を行うことにより、それらの動物の生息状況を把握することが目的である。また、糞分析による食性調査を行うことで、餌資源利用の解明も試みる。それに加え、糞の種同定に地域住民であるバカの知識が有用である可能性があるため、野生動物について詳細な聞き取りを行うことで、種判別の方法として彼らの知識を利用できるか検討する。

発見したヒョウの足跡

フィールドワークから得られた知見について

 今回の調査では、村近くの森、伐採区、国立公園の3つの地域をまたぐように、縦32㎞×横4㎞のトランセクトを設置し、さらに2㎞×2㎞の正方形で区切ることで計32か所の設置場所を設定した。その正方形の中にそれぞれカメラトラップをランダムに合計58台設置し、2週間後に順次回収した。データは現在解析中である。本調査地の熱帯雨林は、多くの河川が入り乱れており、スワンプに何度も遭遇した。地形はなだらかであり、急な斜面はあまり存在しない。森の深い場所まで入っても、Haumania dankelmaniana等といった草本が茂り、進行が困難な場面が何度もあった。これは、倒木等によりできたギャップによって遷移段階の疎らな植生景観が形成されていることに加え、過去に森の奥地で盛んだった人間活動の影響を受けていることが考えられた。国立公園内では、境界から10㎞ほどと、30㎞ほどの二か所の地点でヒョウの足跡を確認できたが、糞などの痕跡は発見できなかった。その他には、アフリカンパームシベット(Nandinia binotata)とアフリカンシベット(Civettictis civetta)の糞を採取することができた。それらの糞を分析した結果、アフリカンパームシベットのものからは昆虫が多くみられ、アフリカンシベットからは植物が主にみられた。地域住民であるバカの人々と森を歩く中で、彼らの驚異的な身体能力と観察能力に印象づけられた。彼らは目前の風景から瞬時に動物の痕跡を見つけ出し、その場で何があったのかを理解していた。どのように彼らが情報を受け取っているのかは非常に興味深い。滞在した村でバカの人々に対し、調査対象の動物について聞き取りを行ったところ、ヒョウとアフリカンゴールデンキャットについては明確な認識をしており、あらかじめ用意した図鑑に載っている足跡と糞を見ただけで種を判別していた。しかし、アフリカンパームシベットやアフリカンシベット等といったその他の食肉目については、住民の間で意見が分かれ、種判別の正確性は定かではない。よって、それらの食肉目の種判別をするためには、DNAを用いた方法を用いるべきである。

反省と今後の展開

 今回の調査の反省としては、言語の習得があげられる。調査地の言語は主にフランス語とバカ語であるが、どちらも習得が不十分なまま渡航に至ってしまったため、現地の人々とのコミュニケーションが難しかった。カメラトラップの設置や、動物の痕跡を探しているときなどは、使用する言葉がある程度限られるため何とか意思疎通して調査を行えたが、村での聞き込みの際に聞き取れなかった話が多い。また、こちらがしたい質問をうまく伝えることができずに、欲しい情報を得られなかったのも心残りである。よって、次の調査までに言語能力を磨いておく必要がある。もう一つの反省としては、ヒョウやその他食肉目に関して得られたデータが予定よりも大幅に少ないことである。これについては、雨季という痕跡がより見つかりづらい時期だったということと、探索の仕方が非効率的だったという二つの原因が考えられる。次回はよりヒョウやその他食肉目の生態を考慮した方法で調査を行う。

  • レポート:畔柳 理 (平成30年入学)
  • 派遣先国:モザンビーク共和国
  • 渡航期間:2018年9月1日から2018年11月22日
  • キーワード:モザンビーク、ルゾフォニア、工業化、製造業

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