スリランカにおけるインド・タミル人清掃労働者の研究/差別に抗するマイノリティの日常実践
対象とする問題の概要 インド・タミルはスリランカに居住するタミル人のうち、英植民地時代に南インドから移住した特定のカースト集団をルーツにもつ者を指す。そして、その多くが紅茶等のエステート(=プランテーション)労働者であることからエステート…
本研究では現代中央アジアの安全保障環境の変化を明らかにするため、独自の外交政策を展開し、バランス外交を展開してきたウズベキスタンを軸とした国際関係を分析する。
中央アジアの安全保障を考えるにあたって、米国・中国・ロシアの大国の影響力を排除することはできないが、中央アジア諸国をアクターとした国際関係を考える必要がある。その中でもウズベキスタンは、大国との独特の関係性や指導者の交代に伴う政策の変化という要因を有しており、独立後の約30年間で国際情勢の変化に対応しながら、周辺諸国とは異なる特徴的な外交を展開してきた。
上海協力機構などの多国間協力枠組みとの関係性の変化・二国間外交の展開の傾向を把握したうえで、アフガニスタンの安定化など具体的な問題の対処について、ウズベキスタン政府がどのような外交的アプローチを展開してきたのかについて考察することを目標としている。
本研究は、ウズベキスタンによる安全保障問題への認識や二国間・多国間外交を、公式文書や報道、政治家へのインタビューの分析を通じて、中央アジア地域を取り巻く国際関係のパワーバランスの変化にウズベキスタンがどのように対応してきたのかを明らかにする。
独立後の中央アジアでは、過激主義・資源・国境画定などの問題の対処や、多国間協力枠組みを通じた連携が課題とされてきた。過激主義などの国境を越えた安全保障上の脅威は世界全体に拡散する可能性があり、さらに2021年のアフガニスタンでの米軍撤退とターリバーンによる政権奪取に伴って、中央アジアの安全保障問題と地域の安定に対する国際的な関心は高まっている。
この地域におけるロシア・中国主導の国際関係の枠組みや米国や西欧諸国による関係構築を取り扱った研究は多い一方で、中央アジア諸国の観点から見た国際関係や外交政策の展開を追う余地があると考えられる。
本調査では、資料調査、インタビュー・研究面談、ロシア語の習得の3つの活動に従事した。
まず資料調査は、ウズベキスタン国立図書館と受け入れ先の世界経済外交大学附属図書館で行った。ウズベキスタンの外交政策を分析した英語・ロシア語の書籍や雑誌のほか、発足して間もない頃(2000年代前半)に発行された上海協力機構の公式文書を収集することができた。
インタビュー・研究面談について、現在は世界経済外交大学で教員を務めているサイドカシモフ元外務大臣にインタビューを実施することができた。在任当時(1993年~94年)のウズベキスタンの外交課題の認識や自身の大臣としての経験、現在のミルジヨエフ大統領の外交政策に対する見解を聞くことができた。また2022年9月に世界経済外交大学内に新設された高等国際問題研究所に所属する研究者との研究面談では、巨視的に中央アジアを見ることだけではなく、ウズベキスタンの外交政策や国内政治が、何を安全保障化[1]していたのかという視点を持つ必要性について議論した。また学生や研究者らとウズベキスタンの外交について議論し、昨今のロシアに対する不信感や、独立の維持に対する熱意など、率直な現地の人々の意見を聞く貴重な機会も数多くあった。
最後にロシア語の習得に関して、世界経済外交大学のロシア語の授業に参加するほか、日本語のクラスに参加し、ゲストスピーカーとして登壇しながら、要所要所でロシア語ではどのように表現するかを学生から教えてもらうなど、双方向的な関係の中で語学の習得に励みつつ、学生たちと関係を構築することができた。また彼らから見た日本へのイメージ・中央アジアと日本の外交のビジョンなどを聞き、日本のソフトパワーの強さを体感できたことは思わぬ収穫だった。
[1] ある社会的問題を、国家の指導者などのアクターが「安全保障上の問題」として言説によって認定する行為。
反省と今後の展開
現代政治・社会に関する研究を進めるにあたっては、インターネットで外部から資料にアクセスできるということもあり、現地に渡航する必要性について考えてしまうこともあった。しかし今回の渡航を通じて、現地の人々と交流し考えを聞くことの重要性を認識することができた。
インタビューに際しては、トラブルによって通訳が不在ということもあり、まだ実用レベルではないロシア語を使わざるを得ず、先方に事前に通知した質問以上の話を引き出すことができなかった。次の機会までには、ロシア語で要点を素早く掴めるリスニング能力を修得したいと考えている。
博士予備論文の執筆に向けた今後の研究の展望として、今回収集した資料を読み込んだうえで、当時の安全保障上の認識の変化を分析していきたいと考えている。またインタビューの内容を裏付ける報道を重点的に調査する方針である。
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