文学とアッタール/イランにおける近年のアッタール研究について
対象とする問題の概要 ドイツの国民作家ゲーテは『西東詩集』においてペルシアの文学作品の影響を受けたことを如実に表している詩を詠んだ。火に飛び込んで自らを燃やす蛾を恋人に例えるというペルシア文学において有名なモチーフを援用したのである。この…
ハンセン病コロニーは、ハンセン病に罹患した患者が自分の家や村を追い出され、空き地に住処を作ることで形成された。当時彼らが物乞いのみで生計を立てていたことから、2000年代に入ってもインドのハンセン病研究はハンセン病差別と物乞いという2点に焦点を当てられてきた。しかし現在その創設者たちは70-80代になっており、物乞いで生計を立てる者は少なくなっている。またその子供・孫・ひ孫など4-5世代に渡って自身が生まれたコロニーに住んでいる。そしてコロニーに住んでいるからといって全員がハンセン病罹患者/回復者であるわけではなく、ほとんどがハンセン病罹患歴がない。そのため現在のハンセン病コロニーはハンセン病回復者が住むという特性を除けば、ほとんどインドの地方に存在する普通の村と同じだと言えるだろう。このように世代の変化と共にハンセン病コロニーに住む人々の生活・就労は大きく変化している。
本研究ではハンセン病コロニーにおける生存戦略の変化を明らかにすることが目的だ。そのため主に2点に焦点を当てる。1つ目は結婚方法である。結婚方法からコロニーの内部構造や外部との関係を考察することでハンセン病コロニーがどのように維持されているかを明らかにする。2つ目は第二世代以降の就労の変化を明らかにすることだ。コロニーには物乞いによって生計を立てていた後遺症のある回復者よりも、見た目にはハンセン病とは分からない人々の方が多く住んでいる。しかし彼らはハンセン病コロニーに住んでいる以上、ハンセン病と自身を切り離すことはできない。そのような状況で彼らがコロニーに住みながら物乞いに代替する就労はどのような形であるかを明らかにする。
フィールドワークは西ベンガル州プルリア県アドラ市にある “Manipur Colony”(以下マニプールとする)更にバンクラ県ビシュナプール市にある“Peardoba leprosy Aftercare Colony”(以下ピアルドバとする)にて実施した。
マニプールでは2つの調査を実施した。婚姻に関する調査では、婚姻方法や婚姻に対する考えについて結婚3年以内の6組の夫婦にインタビューを実施した。これによって調査した内の3組がハンセン病コロニー間のお見合い結婚であったことがわかった。彼らは婚姻において「ハンセン病コロニーやその環境を理解していること」が重要であり結婚相手に求めることだと回答した。その理由としてコロニーに住む人々が貧困層であることやコロニー自体のインフラ・衛生環境が悪いことを知っていることが結婚した後に重要になってくることや、結婚後にハンセン病コロニー出身だからと差別される可能性あること等が挙げられた。次にコロニー内就労の調査として、マニプール内の福祉施設を運営するNPO法人 “MLRC”(Manipur Leprosy Rehabilitation Center)にて働く17人にインタビューを実施した。これによって MLRC における労働を求めてマニプールに住む人がいることがわかった。それは MLRC の労働がマニプール内だけでなくその周辺においても良い条件だと考えられていることが要因であった。
ピアルドバでは就労の調査として、政府の農場で働く8人の男性に調査を実施した。これによって政府の農場内労働の状況が悪質であることや彼らがそれに対して不満を感じているために子供の教育に力を入れていることがわかった。またピアルドバ全体を把握するために村長へもインタビューを実施した。それによりピアルドバと政府のつながりや就労状況・結婚状況などを把握することができた。
今回のフィールドワークでは計画していた調査を完遂することができなかった。それは通訳者から男女の関係を求められたことで計画が滞ったことが大きな要因だ。自身がインドや特に地方という文化の特性を理解していればこのようなことにならなかったと考える。今後は通訳者だけではなく調査でもそのようなことがないようインド文化に対して理解を深めていきたい。
今後は修士論文に向けて他のハンセン病コロニーにおいてフィールドワークを実施する予定だ。そこは “SILF”(Sasakawa Indian Leprosy Foundation)が支援に力を入れているコロニーである。言い換えればハンセン病という名前を利用して生存戦略を立てているコロニーだ。このコロニーで新たな生存戦略を明らかにできるよう綿密な計画を立てていきたい。
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