京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 COSER Center for On-Site Education and Research 附属次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
フィールドワーク・レポート

ウガンダ南西部の人口稠密地域における異常気象による土壌浸食と農家の対応

浸食され硬い粘土層が露出した耕作地

対象とする問題の概要

 ウガンダの人口は3400万人で、2014年までの10年間における人口増加率は3.03%と高い [UBOS 2014]。人口の急速な増加は1人あたりの農地面積の狭小化と作物生産の減少をすすめ、食料不足が発生することも懸念される。研究地域であるウガンダ南西部はグレートリフトバレーの周縁部に位置し、標高が1,220mから2,350mの高原地帯となっている。斜面地では土壌浸食の危険性が高く、土壌浸食の発生により不規則な小区画が増加することによって、農地の生産条件が悪化する危険性がある。サハラ以南アフリカ地域では、異常気象によって不安定な農業生産を余儀なくされている地域も多い。ウガンダ高地では気候変動の影響によって、異常降雨による洪水や地すべり、気温の上昇によるマラリアの拡大が指摘されている[Bagoora 2010]。

研究目的

 本研究の目的は、土地不足が深刻なウガンダ南西部の農村において、土壌浸食が農業や人びとの生活に与える影響と人びとの土壌浸食への対策を明らかにすることである。ウガンダ南西部では、2017年9月から10月にかけて豪雨が発生した。突発的に発生したこの豪雨は、地域住民が経験したことのない異常気象であった。この豪雨はウガンダ南西部一帯で洪水や土壌浸食を引き起こし、20名以上の死者を出した。多くの斜面畑で表土が流亡し、土壌浸食が大きな問題となった。豪雨が発生して一年が経過した調査地で、人々がどのように豪雨による土壌浸食に対処したのか、防止策と発生後の土地利用から明らかにする。

サツマイモ畑におけるOrunbuguによる裸地の被覆

フィールドワークから得られた知見について

1) 土壌浸食に対する対応と防止策
 2017年9月に発生した豪雨により、多くの農地では表土が流亡し、硬い粘土層が露出した(写真1)。土壌が斜面上部の耕作地から流入し、播種した作物の種子に覆土すると、発芽率が低下する。この発芽障害を防ぐ目的で、人々は斜面上部に溝を設けていた。農家は溝を造成し、雨水の流入を防ぎジャガイモの腐食や種イモ、種子の流亡を防ぐことに重点をおいていた。そのため、休閑地では土壌浸食を防止する取り組みは行われていなかったが、休閑地に草本類を繁茂させることで土壌浸食を緩和しようとしていた。斜面地でよくみられるイネ科の草本Orunbugu(Cynodon dactylon)は繁殖力が強く、地面に強く伸長する。人びとはこの草本を刈り取って乾燥させ、裸地が多いサツマイモの畝に被せて、土壌浸食を防いでいた(写真2)。近年の気候変動による大雨や干ばつの経験から、雨滴衝撃による土壌浸食を和らげること、そして干ばつ時の土壌水分の減少を防ぐことを目的に利用されていた。
2) 土壌浸食後の農地利用
 土壌浸食後にみられる特徴的な農地利用について紹介する。谷底に位置する緩傾斜の耕作地では、斜面上部から流入した肥沃な土壌を利用して、換金作物であるジャガイモを連作していた。一方、斜面地では豪雨発生の直後に、土地の所有者は土壌浸食による地力低下を理由に休閑を予定していたが、土地不足を理由にやむなく耕作していた。
 男性A氏が所有する約1.8aの斜面地では、2017年5月にインゲンマメが播種された。その後9月の豪雨で雨水が斜面上部の耕作地から流入し、耕作地の中心部に生育していた株が土壌とともに流亡した。A氏は、残ったインゲンマメを2018年2月に収穫した。収穫した後、すぐにジャガイモが植え付けられ、5月に収穫された。2017年11月に聞き取りをした際には、土地生産性が低く、半年ほど休閑をしたいと述べていたが、家屋からの距離が近く利便性が高いこと、そして子供の教育費のために現金が必要であったため、実際にはA氏は換金用のジャガイモを栽培していた。

反省と今後の展開

 土壌浸食後の農地利用から、人びとは作物の選択に、耕作地の生産性や地形をはじめとする自然環境とともに、家や幹線道路から耕作地までの距離といった利便性を重視している。これまでの農地の場所と利用実態のデータを分析し、農地利用の特徴を明らかにしたい。豪雨による土壌浸食は農業生産の増減を引き起こし、農地における作物栽培の頻度に大きな影響を与えていた。今後、土壌分析を実施して、土壌浸食による土地生産性の増減を地形ごとに明らかにしたい。

参考文献

【1】Bagoora, F.K. 2010. Challenges of Climate Change in Mountain Ecosystems in Africa. In National Environment Management Authority (NEMA). An Overview Presentation at the Side Event Organized Mountain Alliance Initiative, United Nations Climate Change Conference COP16 and CMP6, pp. 29.
【2】UBOS (UGANDA BUREAU OF STATISTICS). 2014. National Population and Housing Census 2014 Provisional Results. (2018年11月16日)

  • レポート:堀 光順(平成26年入学)
  • 派遣先国:ウガンダ共和国
  • 渡航期間:2018年8月4日から2018年10月27日
  • キーワード:土壌浸食、チガ、斜面耕作、土地利用、在来知識

関連するフィールドワーク・レポート

バカ・ピグミーの乳幼児の愛着行動

対象とする問題の概要  狩猟採集民研究は、人類進化の再構成を試みるための手がかりを提供しうる。しかし、狩猟採集民の文化は多様であり、それゆえ人間の社会のアーキタイプを議論する上で様々な論争がなされてきた。そのような例の一つとして愛着理論にか…

北タイ少数民族とコーヒー栽培との関わり/コーヒーで築く新たな世界

対象とする問題の概要  タイ北部は山地や森林を広く有する。20世紀中頃から国民国家の形成に力を入れ始めたタイ政府は「森林政策」や「山地民族政策」を講じ始めた。その際、主に山間部に居住する非タイ系諸族の人々に対し、ケシ栽培や焼畑行為による森林…

東南アジア大陸部におけるモチ性穀類・食品の嗜好性について

研究全体の概要  東北タイ(イサーン)およびラオスでは、日常的に主食としてモチ米が食されている。一方、タイ平野部を含めた東南アジア大陸部の多くの地域では主にウルチ米が主食として食されており、主食としてのモチ米利用は、イサーンやラオスの食文化…

東南アジアにおけるプラナカン・インディアンの研究/シンガポールを拠点として

対象とする問題の概要  プラナカン・インディアンは、15世紀頃マラッカ王国統治下において、南インドからのインド系商人と現地女性(マレー人、華人等)との婚姻によって誕生したとされる。イスラーム勢力の拡大や、ポルトガル、オランダ、イギリス、日本…

沖縄における座り込みの起源と広がり

研究全体の概要  本研究は、沖縄における社会運動の抗議レパートリーの様体:特にその起源と広がりを明らかにするものである。社会運動研究における抗議レパートリーとは、抗議に用いられる手段のセットであり、座り込みやシュプレヒコール、プラカードの持…