京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 COSER Center for On-Site Education and Research 附属次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
平和情報ステーション

留学フェア@エチオピア

写真1: 留学フェアの会場となったアジスアベバ大学のメコネンホール

2017年9月20日の午後にエチオピア連邦民主共和国の首都アディスアベバ大学において、北海道大学が主催する「日本留学フェア」に西真如特定准教授(アジア・アフリカ地域研究研究科)とPatou Musumari特定助教(医学研究科)と共に参加した。2017年2月にガーナで行われた留学フェアと同様に、北海道大学が実施している文科省の「留学コーディネーター事業」の一環として今回の留学フェアも企画され、北海道大学はもちろん、本学の他には文部科学省、日本学術振興会ナイロビ研究連絡センター、日本学生支援機構、宇都宮大学、国際大学、芝浦工業大学、東京外国語大学、日本国際協力センターのスタッフが、会場であるアジスアベバ大学のメコネンホールに集まった。

私自身は、エチオピアへの渡航が初めてで、それまでエチオピアとの縁はなかった。私はマダガスカルの動植物の生態を対象に研究を行ってきた。実は、マダガスカルで共同研究を行ってきたアンタナナリヴ大学の大学院生を、この2017年10月から国費留学生としてASAFASに迎えることになった。彼の留学は、北海道大学による留学コーディネーター事業からの支援を受けているのである。このような縁で、少しでも恩返しができないかと思い、今回の留学フェアに参加することにした。

雨の中にも関わらず、270人を超える学生が集まり、立ち見の聴衆もいるほど会場は盛況であった。留学フェア自体は午後に行われたが、同日の午前に、同会場ではアジスアベバ大学と京都大学との大学間での学術交流協定の調印式が執り行われ、山極総長による署名と基調講演によって会場は京大色で温まっていた。観光都市・京都の魅力、京都大学の歴史と規模、ノーベル賞に代表する世界レベルの研究、さらには30年におよぶエチオピアでの研究活動をプレゼンで紹介した。午前のアジスアベバ大学との調印式の様子を撮った写真も急遽プレゼンに組み込み、京都大学のアフリカとの強いつながりをアピールしたつもりである。京都大学で学位を取ったエチオピア人留学生6名のうち、4名がアジスアベバ大学で教鞭をとっていることも聴衆の関心を集める要因になっただろうか。

写真2:各大学によるプレゼンテーションの様子

アジスアベバ大学と京都大学の学術交流協定締結の調印式の様子はココのWebサイトで報告されている。

各大学による10分間のプレゼンが終わると、会場入り口横の廊下に設けられた各大学のブースで個々の学生からの問い合わせに対応した。京都大学の概要や留学生用の教育プログラムがまとめられた冊子を渡す際に、学生には興味がある学部/研究科などを答えていただくアンケート用紙の記入をお願いした。回収できたアンケート70部のうち、圧倒的な1番人気は工学(43%)で、次に経済学/経営管理学(13%)と続いた。私は渡航初日からアディスアベバの高層ビルや道路、鉄道の建設ラッシュに圧倒されていたが、こうした急激な都市開発や経済成長の流れは大学生の学術的な興味にも直結していることを強く感じた。また、ASAFAS出身のアジスアベバ大学の教員に指導を仰いでいる学生1名が、ASAFASを受験したいと訪ねてきた。アジア・アフリカ諸国に大学教員を輩出しているASAFASにとって、このような2世代目の留学件数が増える可能性はこれから期待できるのかもしれない。

写真3:ブースで留学の相談を受けるMusumari先生(右)

翌日の2017年9月21日はアディスアベバ市内にあるサンフォード・インターナショナルスクールを訪ね、日本学生支援機構、芝浦工業大学、北海道大学のスタッフと共に、高校2年生相当の生徒に日本の大学を紹介した。その後は、窓口となっていただいた先生と職員室で意見交換を行った。この高校では、ほとんどの生徒がエチオピア人であるものの、多くの生徒がアメリカのビザを所有し、アメリカもしくはヨーロッパのトップクラスの大学に進学するという。先日もスタンフォード大学、プリンストン大学、コロンビア大学などのアメリカ勢による留学フェアが企画されたらしい。昨年は中国の工学系の大学にも進学する生徒も出てきたという。残念ながら、日本への留学はこれまでにないということだった。しかし、日本のテクノロジーや漫画、武道などの独自文化への関心は高いらしく、今回の私たちの留学フェアへの生徒の参加数はとても多かったという。しかし、英語話者への学部入試や講義制度が十分に整備されていないことが、日本への留学を大きく妨げているのではないかという意見をいただいた。具体的な改善案としては、国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)による資格を活用した大学進学へのルートの構築などが案として挙げられた。

写真4:サンフォード・インターナショナルスクール

今回の留学フェアでは、大学でも高校でもエチオピアにおけるトップクラスの教育機関を視察することになったが、世界の大学間の競争は研究だけでなく、次世代の優秀な人材に入学してもらう点でも競争が繰り広げられていることを痛感した。京都大学における「吉田カレッジ構想」の実施や特色入試による国際バカロレア資格の活用、各国の学生のニーズ(今回は工学や経済学)に応えられるような留学フェアの開催は、こうした競争において有効になるかもしれない。(佐藤宏樹)