京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 COSER Center for On-Site Education and Research 附属次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
フィールドワーク・レポート

ミャンマーの茶園地域における持続的植生管理及び植物利用に関する研究/ミャンマー・タイ・ラオス茶園地域概査

チャノキ(北タイM村)

対象とする問題の概要

 ミャンマーの森林は減少・劣化の一途をたどっており、特に森林減少・劣化が激しい地域における森林保全対策の検討が喫緊の課題となっている。本研究では、下記の点に着目し、保全対策立案にむけて課題に取り組む。

1. 特に森林減少・劣化が著しい東部地域(シャン高原)を対象とする。シャン高原では、経済活動の活発化が森林減少・劣化に関与しているとみられるものの、それら現象の実態はまだ詳細に把握されていない。
2. 地域の土地利用の特色(茶園)に着目する。シャン高原では、茶産業が主な産業の1つである。近年茶の生産量は増加しており、茶の生産に欠かせない薪を供給する森林の持続性が懸念される。
3. 地域の植物資源の新たな利用方法の可能性を検討する。ラオスやタイの山岳地域では、焼畑休閑地での野生チャノキも茶生産に利用されている。この野生チャノキのミャンマーでの利用可能性を検討する。

研究目的

 本研究は、特に森林減少面積の大きいミャンマー・シャン高原茶園地域において、土地・生態系・人との関りについて様々な空間や時間のスケールから、持続可能な植生管理および植物資源利用を目指した森林保全対策を立案することを目的とする。
 衛星画像等を用いて茶園地域の植生・土地利用の変遷を把握し、同地域の茶園や焼畑を含めた土地利用のサイクルを把握するために、今回の調査ではグラントゥルースの取得(衛星画像で確認される対象物の実測)を行う。また、地域の新たな植物資源利用として、すでにラオスやタイで生産されている野生チャノキの生育状況および利用状況を調査し、ミャンマーでの適用可能性について考察する。

乾燥中の茶葉(ラオスL村)

フィールドワークから得られた知見について

<ミャンマー(2017 年8 月1 8 日~29 日)>
 シャン州YG村、WPY村、TBG村、YT村、マンダレー管区HK村において茶園の見学及び聞き取り調査を実施した。上記の村は、山地民ダヌもしくはパラウンの村である。聞き取り調査によると、茶はほぼ国内消費用であり、地域により買取価格に差があることがわかった。また、かつて焼畑休閑地で茶を生産したことや、野生チャノキ生育の情報も得られた。

<タイ(2017 年8 月3 0 日~8 月3 1 日)>
 タイ東北部のM村にて、茶園を見学した。M村においては昔から茶が生産されているが、4-5 年前から中国人が頻繁に買い付けに来るようになったという。古樹を代々使用する茶園のほか、新植地もみられた。焼畑休閑地を利用した茶園ではなかったが、野生チャノキの実生は1 0 年ほど放棄された茶園で確認できた。タイでは、一般的に茶ではなく水が常飲されるが、同村の山地民ラフの人々は茶を飲むとのことである。また、同村では見られなかったが、ミエンという噛み茶も存在する。

<ラオス(2017 年9 月1 日~10 日)>
 ラオス北部のL村およびP村を中心に茶園を見学した。L村は山地民モンの村であり、焼畑休閑地に生育していた野生チャノキを、1 5 年前から中国人が買い付けに来るようになり、同土地を茶園として維持するようになったという。モンの人々は茶を飲用せず、胃薬として使用するのみとのことである。P村は山地民カムの村であり、高さ12m程度に達する野生チャノキの古樹もみられる。同村では、新植されたチャノキの苗木の他、野生チャノキの実生もみられた。カムの人々は、元々野生チャノキを飲用や食用にせず、薪炭用のみに利用していたとのことである。ここでも、5 年ほど前から中国における古樹茶ブームとともに中国系企業が進出している。なお、ラオスでも、タイと同様に一般的に茶ではなく水が常飲される。

反省と今後展開

 今回初めてラオスとタイ内陸部を調査し、意外だったことはこの2 国はチャノキの自然林を有しながらも(一部の山地民を除いて)元々喫茶の習慣がなく、近年の茶産業の興業はほぼ中国企業によるものということである。
 ミャンマーでも、ラオスとタイ同様に野生チャノキの利用や中国企業の茶生産の影響を予想していたが、今回調査を実施したシャン州東南部では、顕著な影響はみられなかった。しかし、中国への輸出用の農産物の増加や野生チャノキの存在等も確認できた。
 日本やミャンマーでは、喫茶習慣には歴史があり、国民は一般的に食事と一緒に茶を飲む。これら2 つの国では、チャノキは主に国内需要の伸縮に応じて、栽培と野生化の間を行き来していたと考えられる。野生化したものの中には、時間をかけて自然林に戻っていった場所があり、今後そのような場所を調査することにより、地域資源としての野生チャノキの重要性について考察できるのではないかと考える。

参考文献

【1】Central Statistical Organization. 2015. 2015 Myanmar Statistical Yearbook.

  • レポート:内藤(磯田)真紀(平成29年編入学)
  • 派遣先国:ミャンマー、タイ、ラオス
  • 渡航期間:2017年8月18日から2017年9月10日
  • キーワード:ミャンマー、タイ、ラオス、茶園、地域資源

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