カメルーンのンキ国立公園におけるカメラトラップを用いた 食肉目の占有推定
対象とする問題の概要 食物網の高次消費者である食肉目は、草食動物の個体数調整などの生態学的機能を通じて、生物多様性の高い森林構成維持に関わる生態系内の重要な存在であるが、近年世界各地で食肉目の個体数減少が報告されており、その原因究明と保全…
オーストラリアでは1970年代に白豪主義が撤廃されると、東アジア系、東南アジア系、南アジア系など移民の「アジア化」が進展してきた。またオーストラリアは移民政策として留学生の受け入れを積極的に行ってきた。特に1980年代後半に留学生の受け入れ方針を、従来のオーストラリア政府による国費留学生中心から私費留学生中心へと転換したことで、アジア系言語を話す留学生の急増につながった[堤 2018]。本研究の対象国ブータンからオーストラリアへの国際移住は 2022 年に急増しており、2022 年 7 月からの 1年間でブータンの全人口の約2%に相当する1万5000人以上がオーストラリアへのビザを取得した[The Bhutanese 2023 (July 29)]。特にブータンの中核を担う高学歴エリート層が大量に出国しており、公務員は約 1500 名、教師は 350 名以上が離職し、その多くが私費留学生およびその配偶者としてオーストラリアに移住したとされる[The Bhutanese 2023 (April 29)]。
本研究の目的は、オーストラリアにおけるブータン人コミュニティがどのように形成・拡大してきたのかを1960年代から現代までの歴史的背景をもとに分析することである。ブータンとオーストラリア両国関係に関する研究としては、1960年代以降の両国関係の構築に関する文献、1990年代のオーストラリアのブータンへの教育協力に関する文献、2022年に西オーストラリア州パースのブータン人移民が直面する問題を分析した文献などがみられる。オーストラリアは移民政策として留学生の受け入れを積極的に行っており、60年以上にわたる両国関係の構築および留学生を含めた国際移動の展開が、2022年以降のオーストラリアへの移住ラッシュおよびブータン人コミュニティの形成・拡大に至る背景にあると考えられる。そこで、本研究では滞在先のブータン王立大学シェラブツェ校図書館で保管されていたKuensel社の55年間分の英字新聞(1968-2023)をもとに、現代の移住ラッシュに至るまでの経緯を通時的に整理しその背景を分析した。
オーストラリアのブータン人コミュニティの形成と拡大の歴史的背景を3つの時期に分けてその特徴と背景を整理した。3つの時期は、「国費留学生増加期(1960年代以降)」、「私費留学生増加期(2010年代以降)」、「移民労働者急増期(2022年以降)」である。これらの時期を経て、両国間のマクロ・メゾ・ミクロ構造の「移民システム」が構築されてきた点が明らかになった。
1960年代以降の「国費留学生増加期」について。この時期の記事の内容は大きく3つに整理できた。一つ目は、コロンボプランの加盟とオーストラリアへの国費留学に関する記事である。人材育成のためオーストラリアへの研修が多くみられた。2つ目は、オーストラリアと南アジア・ブータンとの連携強化に関する記事である。3つ目は、政府間・大学間連携強化に関する記事であり、国費留学の増加と大学間連携が進んでいった。
2010年代以降の「私費留学生増加期」について。オーストラリア国費留学から私費留学への変化、私費留学の増加に関する記事がみられた。2010年代から、留学の傍らパートタイムで収入を得られることなどから、ホワイトカラー層の離職とオーストラリアへの渡航が進み、オーストラリア各地でブータン人コミュニティが形成されていった。
2022年以降の「移民労働者急増期」について。新型コロナウイルス感染症が収まりオーストラリアの国境が再開されると、公務員、大学教員、看護師などホワイトカラー層の大量離職とオーストラリアへの連鎖移住が進んだ。ブータン政府も支援する方向性を取り、移民コミュニティも拡大していった。
以上より、オーストラリアにおけるブータン人コミュニティは、1960年代から国費留学を通じた交流で構築されてきた両国関係が土壌にあり、2010年代ごろから私費留学生の増加を背景にコミュニティが形成され、2022年以降ホワイトカラー層の大量離職とオーストラリアへの連鎖移住をもとに拡大していったといえる。
今回の調査では、滞在先の大学に保管されていたブータンの英字新聞55年分の記事から、オーストラリアにおけるブータン人コミュニティの形成と拡大に関する歴史的背景を整理した。ブータンからオーストラリアへの移民研究は2022年以降に焦点をあてる傾向があるが、1960年代以降の国費・私費留学を通じて「移民システム」のマクロ・メゾ・ミクロ構造が構築されてきた点を指摘できた。一方で、新聞記事の内容を網羅的に記述するだけではなくより深い分析の不足、統計資料やインタビュー調査を組み合わせた包括的な分析の不足、ブータンのみならずオーストラリア側の調査の不足などが今後の課題としてあげられる。
堤純編. 2018. 『変貌する現代オーストラリアの都市社会, 筑波大学出版会.
The Bhutanese. 2023 (July 29) 〈https://thebhutanese.bt/the-australia-reality/〉
The Bhutanese. 2023 (April 29)〈https://thebhutanese.bt/10755-bhutanese-get-visas-to-australia-in-last-9-months/〉
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