口琴の表象と伝承――アイヌ民族のムックリが演奏され続けるということ――
研究全体の概要 口琴は、東南アジアを含むユーラシア大陸に広く分布している。非常に単純な構造だが、演奏の仕方によっては音が全く変わってしまうという奥の深い楽器である。モン族は恋愛の場で用い、ラフ族の口承の物語にも魅力的な楽器として登場してい…
水、サニテーションおよび衛生行動(Water, Sanitation and hygiene: WASH)は人間の健康における基本的なニーズである。持続可能な開発目標(SGDs)においても、すべての人に安全な水とサニテーションへのアクセスを確保することが掲げられている。しかし、サブサハラアフリカでは適切な水供給・サニテーションへのアクセスを持たない人口が依然として多く、その影響は下痢のような健康被害として顕在化している。5歳以下の死亡要因の8%を下痢が占める[WHO 2019]など、不十分なWASHによる問題は深刻である。本研究が対象としているザンビア・ルサカ市でも、とくに都市周縁の低所得地区では水・衛生設備が不十分であり、頻繁にコレラの流行地になるなど、深刻な公衆衛生上の問題が生じている。
本研究では、ザンビア・ルサカ市の都市周縁部に位置するChawama地区を対象地域とし、生活環境における飲料水の汚染の実態を明らかにすることを目的とした。
下痢症の発生要因のひとつとして飲料水の汚染が考えられるが、生活環境において飲料水が汚染される経路は明らかになっていない。そこで、生活環境の様々な媒体(貯留している水、バケツ、コップ、キッチン床、手など)のサンプルを収集し、主に大腸菌を指標として、飲料水質と生活環境汚染の関連を調べた。また滅菌したバケツを提供し、そのバケツに貯留し使用した場合の飲料水質の変化についても同様に調査し、汚染経路の特定を試みた。
また、給水施設の観察、住民への聞き取りにより、水道水がどのように配水され、利用されているのかを調査した。さらに、水道水のサンプルを同一日に一時間おきに収集し、より上流における水質汚染の変動についても検討した。
地区では屋外に設置された共同水栓が使用され、おおむね十数家庭で共有されていた。住民のほとんどは共同水栓から水道水を取水した後、各世帯で蓋つきのバケツに貯留して飲用していた。ほとんどの家庭において、バケツに貯留される飲料水から大腸菌が検出された。同時に生活環境中のサンプルからもひろく大腸菌が検出されたが、特に水を貯留しているバケツや、食器・バケツなどの洗浄に使用されているスポンジは高度に汚染されていた。一方、滅菌したバケツを使用した場合においてもまた、そのバケツに貯留した飲料水から大腸菌が検出された。
地区内にある給水施設では、井戸水を取水し、消毒のために塩素を注入したのち、各水栓へ配水していた。塩素バルブは人の手で、おおむね朝8時台に開栓されていた。そのため、地区内の水栓では、一日の中のある時点で急激に残留塩素濃度が上昇する現象がみられた。またほかの水栓では、観察した時間内では残留塩素濃度がほとんどゼロのまま上がらないこともあった。残留塩素濃度が上昇すると同時に水道水中の大腸菌濃度が低下するケースもあったが、必ずしもその限りではなかった。しかし、残留塩素濃度が高い水道水のグループと、残留塩素濃度が低い水道水のグループでは、残留塩素濃度が高い水道水のグループのほうが大腸菌濃度が有意に低かった。すなわち、場所や時間によって水質汚染の程度が変動していることがわかった。地区内では早朝から多くの住民が水を汲みに来ているのが観察されたが、塩素消毒されていない水を飲用することになり、より高い下痢リスクにさらされているといえる。また、水を汲む時間によって、ごく近隣に住む住民の間にも健康リスクに偏りがある可能性がある。
生活環境が広く汚染されていていることは確認されたものの、飲料水の汚染経路を特定するには至らなかった。試料からDNA/RNAを抽出して病原性微生物を解析することで、その一端を明らかにすることができるかもしれない。しかし今回の調査は数の面でも十分とはいえず、より広範かつ綿密なサンプリングが必要である。また、住民たちがどの時間帯に水道水を取水し、どのくらいの時間保管しているのか、詳細にはわかっていない。住民たちへのさらなるインタビューあるいは観察により、より正確に水利用を理解し、リスクの偏りを評価できる可能性がある。
また、今回の調査は乾季に行ったが、コレラ等の問題は雨季に多く発生している。コレラ等が蔓延する要因を特定するため、雨季にも調査を行いたい。
WHO. 2019. Safer Water, Better Health.
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