政治的暴力の発生要因として、従来は欲望(greed)と不満(grievance)の2つが提唱されてきた。すなわち、前者の分析では、権力を追求する政治エリートの欲望(greed)が、経済的合理性の高い権力闘争手段を選択した結果暴力が起こるとされ、後者の分析では、貧困や経済的不平等などから生じる不満が動機となって暴力が起こるとされる。Kapesa et al. [2020]は、上記の2要因を相補的関係にあるものと提起し、さらに、いずれの視座においても「経済的不平等が客観的に、正確に認識されている」ことが前提化しており、むしろ様々なアクターの主観的な不平等の認識を問うべきであると批判している。本研究はKapesa et al.の所論に基づいて、近年増加しつつある都市の若年貧困層が、自身の経済的政治的立場をいかに認識しているかを明らかにしようとするものである。
Kapesa, R., O. Sichone and J. Bwalya. 2020. Ethnic Mobilization, Horizontal Inequalities, and Electoral Conflict. In T. Banda, O. Kaaba, M. Hinfelaar and M. Ndulo. eds., Democracy and Electoral Politics in Zambia. Leiden: Koninklijke Brill NV, pp. 212—241.