アフリカ同時代美術とその表象:コンゴ人芸術家の美術活動に着目して/アール・ポピュレールの地域的表象
対象とする問題の概要 アフリカ現代美術は,『大地の魔術師』展(89年パリ・ポンピドゥセンター)を契機として欧米のアートワールドで大きく扱われるようになった。「黒人美術」「原始美術」における「原初」性「神秘」性のみの称揚といった批判に対応し…
インドネシア政府は現在、カリマンタン島東部で新首都「ヌサンタラ」の建設を進めている。2045年までの完成を目指し、最終的には東京23区と同規模の都市となる計画だ。政府は面積の75%を森林とする目標を掲げるが、NGOや報道機関からは環境や人権への懸念が指摘されている。具体的には、都市開発による熱帯林・マングローブの減少や、大規模ダム建設による生態系の劣化が挙げられる。また、スパク川周辺では、先住民の生活空間の喪失や立ち退き補償の不適切さも問題視されている。
このような状況を踏まえ、新首都周辺の土地利用・土地被覆の変化を定量的に把握することが急務である。これまでにも当該地域の土地利用変化に関する研究は行われているが、対象カテゴリが限定的で詳細な変化は捉えられていない。現在、首都建設は急速に進み、周辺地域にも多様な変化が生じている。こうした動向を現地調査によって明らかにすることは極めて重要である。
本研究は、新首都建設が人々の生活や自然環境に与える影響を、土地利用の視点から明らかにすることを目的とする。影響の評価にあたり、直接的な土地利用の改変だけでなく、住民の移住や生業・慣習の変化による間接的な変化も対象とした。
現地調査前に、人工衛星データの時系列解析を行い、新たなダムや幹線道路などの大規模な土地被覆変化は抽出したが、周辺で生じる小規模な土地利用変化の把握は難しかった。そこで本調査では、写真撮影と位置情報の記録を通じて現在の土地利用実態を詳細に把握することを目指した。これらの調査を通じ、政府主導の大規模開発が地域社会や生態系に及ぼす影響を空間的にマッピングし、その実態を明らかにする。
本調査では、新首都周辺の土地利用の様子を記録するため、GoPro MAXというカメラを使用した。このカメラは数秒ごとに全方位を撮影し、位置情報とともにデータを蓄積できるため、移動しながら現地の詳細な土地利用状況を記録することが可能である。
新首都周辺では、至る所で新たな道路や橋が建設されている。一方、中心地から約40 km離れると道は未舗装であり、スコールの後には泥沼のようになってしまう場所も多く、インフラ投資の有無による地域差は顕著であった。また、かつて養豚畜舎だった施設が、新首都を訪れる観光客向けのフードコートへと転用されるなど、人工衛星による「空からの視点」では捉えきれない土地利用の変化も数多く観察された。
現地住民への聞き取りでは、「新首都建設を誇りに思う」という声が多く、出稼ぎに行く必要がなくなったことを喜ぶ人もいた。開発による経済効果は顕著で、周辺には工事労働者向けの飲食店や夜市が形成され、地域の活気が増していた。さらに、一部地域では自然洞窟を観光地として活用する動きも進んでいた。一方で、自然公園のレンジャーなどからは、「生態系への影響がすでに出始めている」との懸念の声も聞かれた。
本調査で最も印象的だったのは、新首都周辺の深刻な砂ぼこりの問題である。裸地化した建設用地と頻繁に行き交う工事用車両の影響で、地域全体が常に砂塵に覆われていた。調査を続けるうちに私自身も喉の不調を感じるようになったが、この問題は既存の研究や報道ではほとんど取り上げられていない。特に、バイクや徒歩で移動する地元住民や工事関係者にとっては、健康リスクとなる可能性が高い。このことについて住民の多くは「すでに日常の一部になった」と語っていた。
今回のフィールドワークを通じ、新首都開発が単なる都市計画ではなく、社会・経済・環境の多様な要素が絡み合う複雑な現象であることを改めて実感した。
本調査では、インドネシア政府からの調査許可の発行に想定以上の時間がかかり、新首都周辺地域での滞在期間が限られてしまった。政治的にセンシティブな地域を研究対象とするには、十分な準備と柔軟な対応が不可欠であることを痛感した。今後は、想定通りの調査が進められない場合の代替手段も事前に検討し、調査計画をより綿密に立てたい。
今後の研究では、今回収集した写真データを整理し、土地利用のデータベース化を進める。これを人工衛星データと組み合わせ、土地利用変化のマッピングを行う予定である。また、本調査で明らかになった大気汚染の問題についても研究を深める。具体的には、地域にPM2.5センサーを設置し、定量的なデータを収集するとともに、喘息などの呼吸器疾患の罹患数についても調査を進めたい。新首都地域の大気汚染はこれまでほとんど議論されていないが、私自身が現地で直接経験し、その深刻さを実感した課題であり、今後の研究の核としたいと考えている。
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