スリランカ内戦後のムスリム国内避難民(IDPs)についての研究/女性の視点から考察する国内避難民の社会変化
対象とする問題の概要 本研究では1983年から2009年のスリランカ内戦において、タミル武装勢力により故郷を追放され国内避難民(IDPs)となったムスリムのコミュニティに焦点を当てる。シンハラ対タミルの民族紛争の構造で語られることの多いス…
ケニアでは国民の7割が農業に従事し、そのほとんどが小規模農家であるとされる。近年、農村地域においても商品経済が浸透し、農家による現金収入の必要性が高まっている。同時に小規模農家は、作物を生産しても販売する市場がない場合や、市場があっても気候条件によって価格が変動し、安定した現金収入を得られない、といった課題を抱えている。
契約農業は小規模農家と企業との間で、作付け前に買い取り価格を定め、品質基準を満たした作物の買い取りを保証するため、小規模農家の現金収入の安定化と向上に寄与し得る制度であると考えられる。一方で、企業と農家の間に不均衡な権力関係が生じる可能性が想定されている。このような議論がある一方で、アフリカにおける契約農業の実態を調査する研究は限られている。
本研究では、ケニアにおける事例を取り上げることで、契約農業がどのように実践されているのかを明らかにするものである。対象とするのは、ケニア南西部のナクル県において、契約に基づいてサヤインゲンを栽培する小規模農家グループである。
農家グループのリーダーの家に住み込みで調査を行い、契約内容とその履行状況を明らかにする。調査方法は、グループへの参与観察、グループのメンバーへの半構造化インタビュー、出荷記録の収集を中心とする。
対象とする農家グループは、ナクル県の中心地であるナクル市街地から北西へ30km程の距離の集落にある。彼らは2017年末からF社と一年更新で契約を締結し、サヤインゲンの栽培を行なっている。
調査では、まず契約内容を明らかにした。契約内容としては、生産物は1kgあたり50Ksh(ケニアシリング:2019年10月現在 1Ksh=1.03円) で買い取られ、買い取り対象となるサヤインゲンの品質基準が記されている。
サヤインゲンの種子は3週間ごとにF社から提供される。種子が提供された日から、地域スタッフが各農家の栽培を管理し、各農家は農薬散布のプログラムを含めた技術サポートを受けられる。播種から約2〜3ヶ月後が収穫時期となり、収穫時期の毎週月・水・金曜日に各農家が収穫する。収穫したサヤインゲンは、各自で集荷センターへ運搬する。集荷センターでは、農家ごとの重量が記録され、集荷されたサヤインゲンは、F社によってトラックでその日のうちにナイロビへ運ばれ、ナイロビの自社工場で品質基準に満たないサヤインゲンの選別が行われる。最終的に、買い取り対象となるサヤインゲンが計量され、この重さに対してF社から支払いが行われ、この支払いから種子の代金が控除される。支払いはグループの共同の銀行口座へ振り込まれる。これを、各農家の集荷の重量に対してグループ幹部が按分し、最終的に各農家の個人口座にそれぞれの取り分が振り込まれる。
調査対象グループでは、以上のようにして契約が履行されていた。しかし、グループには参加しているものの、サヤインゲンの栽培を現在ストップしている農家も多く存在することが明らかになった。その理由を各農家にインタビューすると、F社からグループに支払いがあった後、グループメンバーへの分配に時間がかかり、すぐに現金を得られないことや、品質基準に満たないものを選別する際にどれだけの量が除外されているのか、農家ごとにはわからないことを理由として挙げていた。
グループに所属する小規模農家の数が200以上あり、今回は時間の制約上、すべての農家を訪問することができず、インタビュー調査を十分に行えていない。今回の調査では、契約農業を通して利益を最大化するために栽培に熱心な農家がいる一方、一回の収穫で栽培をやめてしまう農家も多くいることが明らかになった。今後、引き続きデータの収集を行い、各農家の質的データ収集を継続していく。
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