ザンビアの農業政策における情報技術の導入と農村生活
対象とする問題の概要 World Food Programme [2016] によると2016年8月現在、アフリカ南部ではエル・ニーニョ現象が深刻な干ばつの被害をもたらし1,800万人が栄養失調と飢餓に直面している。アフリカ南部最大の穀倉…
カメルーン熱帯雨林に住むバカピグミーは狩猟採集を営む人々である。彼らにとって狩猟という行為は生活の手段としてだけでなく個々人の精神世界や文化形成において欠くことのできない要素として認識できる。近年では定住化や貨幣経済の影響により狩猟採集生活から現代的な生活にシフトする傾向もみられる。一方産業社会と呼ばれる日本では、かつて各地の農村で副次的に行われていた狩猟採集はそれらの知識や技術を有する者の高齢化及び減少、里山の荒廃によって衰退し、安定した食品流通が確立されている現代において生業としての狩猟採集はほとんど必要なくなったといえる。しかしながら、農村地域では現在も昔ながらの猟を続けている人々がおり狩猟が生業や他の娯楽を超越する存在として認識され狩猟者に深く影響を与えている。本研究では変容し続ける生活形態のなかで個人や集団にとっての狩猟の役割について明らかにすることを目的とする。
儀礼的に春グマ猟を行う東北地方のマタギの人たちや、九州山地で猟の獲物たちを神楽の演目にも取り入れてきた人たちがいることからわかるように、日本には狩猟採集を通じて豊かな民俗知を有している人々がいることが知られている。このように里山や森林を利用し自然と人間活動のかかわりを長年にわたり伝統として維持してきた地域の研究がなされてきた。一方でそれ以外の地域に住む人にとって狩猟は数多ある娯楽の一つであって生業の選択肢にはほとんどあがらないといってよいだろう。今回の調査では宮崎県串間市で猟犬を用いたイノシシ猟を行う狩猟者へ狩り、獲物、そして猟犬をどのように認識し個人や地域に影響を与えているのかを聞き取り調査によって明らかにすることを目的とした。
今回の調査では人口700人ほどの市木村で、一部聞き取りを含めイノシシを獲物とする狩猟者とその家族計14名に対するアンケート調査を行った。さらに、地域の図書館で郷土資料の文献調査を行った。アンケート内容は狩猟者の属性や狩猟に関する基本情報から生活の中での狩猟の位置づけやモチベーションについて回答してもらった。調査によると、まずこの地域における狩猟はウサギなどの小動物を中心として大正期に始まり、昭和初期に鹿児島からイノシシの群れが渡って来たことで猪狩りが始まった。それまでは稲作を中心に林業や牧場経営をしており藩政時代の倹約令から肉食をすることは殆どなく狩猟と地域の歴史的な結びつきは薄いといえる。その後、男性の娯楽として狩猟が注目を集め最盛期には市木村に約30人の狩猟グループと30、40匹の猟犬がおり市外からの参加者もいたという。2000年代に入ると狩猟人口は減少し高齢化が進み同グループは現在8人にまで減った。しかしながら狩猟者の多くを占める70歳以上の人々は猟期になれば毎週、わな猟の場合はほぼ毎日狩猟活動に専念している。アンケートの結果、狩猟のモチベーションに関して「楽しみ」、「健康維持」、「猪肉が好き」と言った回答が寄せられ、狩猟の存在に関しては「生き甲斐」、「人生の一部・楽しみ」といった回答が多かった。特に今回の調査に協力してくれた辰巳猟友会のリーダーは猟師の家系に生まれ最年長であり狩猟歴が一番長く、「狩猟をすることはしごく自然なことであり、賢いイノシシとの駆け引きを猟に必要不可欠な猟犬と共に行うことが醍醐味である。」と話してくれた。今日、現代は多種多様な娯楽にあふれ新たに生まれ続けている。人類による農耕牧畜が起こる以前から存在していた狩猟は生業という枠を外れ、伝統的な地域とのつながりがなくとも、自然との本能的な活動として個人に深く影響を与える要素と捉えることが出来るかもしれない。
今回の調査では国内の新型コロナウイルスの感染拡大により予定していた調査が大幅に制限され対面での聞き取り調査が十分にできなかった。そのため、今後はインタビューを強化するとともに、感染状況が改善しない場合を考慮してリモートでの新たな調査方法を試行する必要がある。今後はカメルーンのバカの人々の狩猟の認識について既存の研究をあたり文献調査を行い、今回の調査で得た知見をカメルーンの熱帯雨林と異なる生活形態における狩猟の位置づけとして比較、議論を展開していく。また海外渡航が可能であればアフリカでのフィールドワークで過去と現在の狩猟の位置づけの変化について調査を行う。
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