茨城県大洗町インドネシア人のコミュニティとエスニック・アイデンティティの実態――キリスト教世界観との関連――
対象とする問題の概要 1980年代以降、日本における外国人定住者数は急増している。1990年の入管法改正による日系外国人の流入、1993年の技能実習制度創設による外国人労働者の全国的な受け入れ、彼らは都心から地方にまで幅広く定住するように…
ケニアでは、国民の7割が農業に従事している。一方で、農業に適した土地は全国土の2割程度に限られている。近年の人口増加に鑑みると、より多くの人々が小規模な農業適地で農業を行ないつつあると言える。また、ケニアの農村においても、商品経済が浸透し、小規模農家世帯が現金収入を得る必要性がますます高まっている。つまり、限られた土地において、より高い現金収入を得ることが要請されているのである。契約農業は、一般的な商品作物栽培とは異なり、確実に現金収入を得られるという点で重要である。
契約農業の特徴は、農作物を作付けする前に、栽培する農作物のグレードを決め、各グレードの単位量あたりの価格を決める点にある。また契約は、地域の小規模農家がグループを組み、グループと企業との間で締結する場合が多い。このような契約に基づいて生産された農作物の一部は国内市場で流通し、その他は海外へ向けて輸出される。
グループとして契約農業を行なっている人々に注目し、契約農業を通じた住民の組織化についての予備調査として、グループの基礎データを把握することを目的とした。そのために、ケニア国内の農業適地とされる県の契約農業の概要を調査した。インタビューでは、どの農作物を生産しているか、グループの所属農家数、いつから契約農業を開始したか、といった、基礎的な情報を収集した。
7県(カウンティ)で広域のインタビュー調査を行なった。各県毎のインタビュー数は、ウアシン・ギシュ県(4件)、ナンディ県(6件)、ナロック県(1件)、ボメット県(1件)、ケリチョ県(1件)、ナクル県(9件)、キリニャガ県(2件)である。
サヤインゲンを例に、契約農業がもたらす売上総利益を聞き取った。サヤインゲンの栽培には、堆肥、化学肥料や殺虫剤などの化学薬品、水やりのための燃料代、収穫の際の人件費支払いがコストとして必ず必要になる。さらに、契約締結時に決められた基準に満たないものは企業から買取が拒否される。つまり契約農業は、基準を満たしているなら確実に買い取ってもらえる、技術的なサポートがある、という点で農家にとってメリットがあるが、利益を保証するものではないことが明らになった。
ボメット県にあるグループAは、2014年に設立し、2015年からS社とのアボカドの契約農業をスタートさせた。S社との取引を始めると、契約では収穫から2週間以内の支払いが明記されているにも拘らず、S社の支払いは最大で6〜7ヶ月遅れることもあった。AグループはS社と交渉することで、アボカドの買取価格を引き上げさせ、3年目には1年目に比べて1.6倍の買取価格となった。これは、小規模農家が個別ではできなかった企業との交渉を、グループ化することで実現できた事例であると言える。
今回の調査から、契約農業を行なっているグループが協働することによって、買取価格の引き上げに成功し、自分たちをエンパワーした事例が示唆された。しかしなぜ価格の引き上げで協働できたのか、他のグループでも、同様の、あるいは異なるかたちでの協働が生じているのか、生じていないとしたらそれはなぜなのか、その要因については明らかにできていない。
契約農業を通じて組織化することは、売上利益の増加という経済活動上の目標を組織内で共有できる点で、他の相互扶助組織とは異なる。ケニアにおける小規模農家の営農は各世帯で独立しており、経済活動上の相互扶助はあまり見られないことが一般的である。これまでの研究では、ケニアにおける契約農業の概要を把握することを目的として調査を行なった。今後の研究では、小規模農家同士の関わりについて見ていくことで、契約農業がグループをエンパワーさせる要因が何かを明らかにしていくことを目的とする。
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