ケニアの都市零細商人による場所性の構築過程に関する人類学的研究――簡易食堂を事例に――
対象とする問題の概要 ケニアでは2020年に都市人口の成長率が4%を超えた。膨張するナイロビの人口の食料供給を賄うのは、その大半が路上で食品の販売を行う行商人などのインフォーマルな零細業者である。その中でも、簡易な小屋のなかで営業されるキ…
ザンビアの首都ルサカにおける人口は2024年8月現在で約332万人と報告されている。その内、約7割の人々がルサカ都市圏の未計画居住区(以降、コンパウンド)で生活をしている。現在、コンパウンドでは、インフラの未整備やコレラをはじめとする健康や衛生の観点から開発・改善を目的としたプロジェクト等が多く行われている。一方で、コンパウンドで生活を営む人々に関する報告は少ない。そのため、私たちは、住民の人々が貧困ゆえにコンパウンドに住まざるを得ない状況であるかのように捉えてしまう。つまり、どのようにコンパウンドを認識し、どのようにコンパウンドに人々が集まってくるのかが不透明である。
研究目的は、どのようにして人々が対象のコンパウンド(チャワマコンパウンド)に住む選択を行ったのかを明らかにすることとする。特に、彼らの居住歴とライフコースの関係性に着目した。
調査の結果から、住民に対して4つの特徴が挙げられる。一つ目は、居住形態には賃貸と持ち家の2種類があることである。二つ目は、賃貸世帯は持ち家世帯よりも多いことである。三つ目は。賃貸世帯は居住期間が短く、持ち家世帯は居住期間が長いことである。四つ目は、賃貸世帯の主な担い手には子育て世代が多く、持ち家世帯の主な担い手には子育てを終え、孫のいる高齢世代が含まれていることである。ライフヒストリーの聞き取り調査を2名に行った。そのうちの一人は持ち家に住む69歳の女性であった。彼女の生まれはルサカ市内の別のコンパウンドで、最終学歴はPrimary Schoolの7年生(大体13歳にあたる)である。彼女のライフヒストリーにおける特徴として、彼女の両親や姉弟は対象地域のコンパウンドと直接的な繋がりが無い点と、また、彼女の二人目の夫が亡くなった後も同じコンパウンドに子供たちと住み続ける選択をし、持ち家の購入に至った点が挙げられ、これらは上記4つの特徴と合致する。つまり、彼女自身がかつては子育て世代としてコンパウンドの貸家で生活をし、年齢を重ねると同時に将来性を考えて持ち家を所有し住み続けることを選択しているということである。他の調査者の例でも、子育て期間にコンパウンドに移住をしている事例が多く挙げられる。
以上より、人々がコンパウンド移住を選択する背景には、貧困というよりも、むしろ彼ら彼女らのライフコースや将来性を考慮したものがあると考えられる。そして、ライフコース上で別の地域に引っ越しをする者もいれば、そのまま住み続ける者もいる。
今回の調査では、主に日中の家事仕事を行っている女性達に聞き取りを行った。結婚をきっかけに現在の住居に越してきた人々も多かったが、そのことを深堀することができなかった。性別によっても移住体系が異なるように推測されるので、次回調査で焦点を置きたい点の一つである。また、対象のコンパウンド自体も広く、地域によって特色が異なるため、調査地の拡大や地域の歴史についてのフィールド調査と文献調査を進めていきたい。
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