南アジアにおけるイブン・アラビー学派
対象とする問題の概要 本研究では、イスラームの代表的スーフィーであるイブン・アラビー(d. 638/1240)の思想が、南アジアにおいてどのように受容されてきたのかを明らかにすることを目指す。その際、19-20世紀インドのウラマー・スーフ…
本研究の対象は、イスラーム圏で活発化しているイスラーム型フィンテックとマレーシアのムスリム零細起業家である。特にマレーシアに注目して研究を進める。マレーシアでは、10年程前からイスラーム型フィンテックへの関心が高まっており、特になどクラウドファンディング、QRコード決済、P2Pレンディングの分野に関する企業が多く見られる。関連する先行研究としては、イスラーム型フィンテックのケーススタディや事例、起業家のイスラーム的要素の関連性について述べられたものがあるが、フィンテック個々の事例紹介や、量的調査を行っているものが多く、具体的なイスラーム的な観点とフィンテックを言及したものは少ない。したがって本研究では、イスラーム的な観点から起業家とイスラーム型フィンテックに着目し、それがビジネス活動の資金調達、マーケティングにおいてどのように表れているのか調査・考察を行う。
本研究は、マレーシアにおけるイスラーム型フィンテックが若手ムスリム起業家に与える社会経済的役割とその影響を解明することを目的とする。特にフィンテックの資金調達手段としての利用状況とビジネス機会創出の影響を調査し、ムスリム起業家の市場拡大への貢献を評価する。イスラーム金融はシャリーア法に基づき、利子を取らない独自の金融システムを持ち、マレーシアはその先進国である。近年、フィンテックの導入が進み、若手ムスリム起業家がこれを活用してビジネスを拡大する動きが顕著である。
研究手法としては、インタビューとアンケート調査、フィンテックイベントやセミナーへの参加、企業訪問、ドキュメント分析を行う。調査対象には、若手ムスリム起業家、フィンテック企業の経営者・従業員、銀行担当者、政府の金融政策担当者が含まれる。
今回のフィールドワークでは、マレーシアのフィンテックおよびイスラームビジネスに関連する複数のイベントや企業を訪問し、現地の専門家や起業家と直接対話する機会を得た。これにより、マレーシアにおけるフィンテック産業の発展や、イスラームの価値観が企業経営や投資にどのように影響しているかについての理解を深めることができた。
「FinTech Expo」では、IT企業や金融機関の社員と接点を持ち、マレーシアのデジタル金融環境について具体的な事例を通して学ぶ機会を得た。特に、Securities Commission Malaysiaの関係者との対話を通じ、フィンテック業界が規制機関とどのように協力しているのか、また安全性や透明性に関する現地の取り組みについて理解を深めた。
また、イスラーム型フィンテックをテーマとした起業家や教育テクノロジー分野の専門家の話を聞き、マレーシアにおけるイスラーム的視点からのスタートアップの事業展開や、テクノロジーの社会的な応用についての考察を得た。
インタビュー調査として、マレーシア政府のテクノロジー普及政策について、MIGHTのCEOであるAbdul Rahim氏からも意見を聞くことができた。彼は、イスラームビジネスにおいて「信頼」や「相互理解」が企業連携の上で最も重要であると強調していた。特に、異文化間でのパートナーシップにおいてはイスラーム的な規範を理解し合うことが成功の鍵となるとし、事業運営の中で透明性やトレーサビリティが重視されることが述べられた。またフィンテックとして、ブロックチェーンのトレーサビリティが評価されていることも確認した。このような視点は、イスラーム型フィンテックにおける信頼構築の重要性を再確認させるものであり、今後の研究にも反映できると感じた。
今回のフィールド調査では、文献収集とステークホルダーとの信頼関係構築を行なったが、具体的なムスリム起業家や、フィンテックを扱う中小企業へインタビュー調査を十分にできなかったことである。実際にフィンテックサミットに参加したムスリム起業家はイスラーム型フィンテックやベンチャーキャピタルに関する事業を行っていた。これら零細ムスリム起業家に対して直接的により深いインタビュー調査を進めることによって具体的なフィンテックの活用の実態について明らかにできるのではないかと考える。今後はこれらの事例を通して、イスラームの教えとフィンテックの実践、起業家精神の関わり合いについて考察を行いたい。
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