カメルーンのンキ国立公園におけるカメラトラップを用いた 食肉目の占有推定
対象とする問題の概要 食物網の高次消費者である食肉目は、草食動物の個体数調整などの生態学的機能を通じて、生物多様性の高い森林構成維持に関わる生態系内の重要な存在であるが、近年世界各地で食肉目の個体数減少が報告されており、その原因究明と保全…
動物園は様々な展示を通して来園者の動物観形成に影響を与えうる。本研究では動物が柵や檻などの中で展示されている通常展示、来園者と動物との間に檻などがないウォークイン展示、来園者が動物に触れることのできるふれあい展示など、様々な展示方法に着目し、動物観形成における効果の違いを検証する。
調査は日本国内の公立動物園3園で実施された。動物園の調査では、当該展示の設立に伴う園の狙いや、運営の方法などを職員への聞き取り調査より明らかにし、展示に対する来園者の印象を検証するため100を超えるアンケートを回収した。また、展示を観覧中の来園者の追跡観察を行うことでそれぞれの展示での観覧のパターンを記録した。
動物園は動物を展示することを通じて、来園者に保全に必要性を啓発するなど、様々な役割を有している。動物園では展示施設の外観の違いが来園者の動物への印象に影響すると言われている。本研究では動物園の展示が来園者の動物観を形成させる場として鑑み、展示の理念と来園者に与える印象を分析することで、展示がどのような動物観を形成させるかについて明らかにすることを目的する。
今回の調査ではワオキツネザルのウォークイン展示(人と動物の間に柵などがない展示)と通常展示を行っている公益財団法人日本モンキーセンター(愛知県犬山市)、トカラヤギとザーネン、コリデールのふれあい展示を実施する仙台市八木山動物公園(宮城県仙台市)、クロツラヘラサギやクロトキをはじめとするアジアの湿地に生息する鳥類のウォークインバードケージ展示を行う多摩動物公園(東京都日野市)の3園で調査を実施した。同所で職員へのインタビューや調査実施者による展示の観察、来園者へのアンケート調査などを行い展示の経緯や運営方法、展示の環境、来園者の展示に対する印象などを検証した。
日本モンキーセンターのウォークイン展示「Waoランド」では、ワオキツネザルの放し飼いされているエリアの周囲を幅5mの池で囲まれており、池と接していない箇所はフェンスで囲まれ、ワオキツネザルの飼育舎とつながっている。Waoランドは設立当初は「ワオキツネザルの生息地を再現し、来園者へマダガスカルに来た気持ちを味わってもらう」というコンセプトから誕生した。水鳥のウォークイン展示がある多摩動物公園のウォークインバードケージにおいても、自然を模した空間の中に鳥が放し飼いされており、来園者は鳥の飼育されている同じ空間の中に入ることができる作りになっている。展示エリア内には来園者が通る道がロープなどで区切られており、動物は来園者の通るエリアと来園者のいないエリアを自由に行き来ができる。両展示において、来園者が展示動物に触れたり、餌をあげたりすることは禁止されている。
八木山動物公園のヤギとヒツジのふれあいでは、ふれあい広場と呼ばれるフェンスで囲まれたエリアで小型のヤギであるトカラヤギと日本種のザーネン、コリデールが放し飼いされている。ヤギとヒツジのふれあいは時間限定で行われ、開催時間中は担当者が常駐している。1組10分間のふれあい時間が設けられる。
Waoランドとふれあい広場において開園時間中は職員が常駐しており、飼育スタッフが来園者からの質問に答えたり、動物の説明をしたりする場面が多く見られ、これらの行動は来園者の展示で受ける印象に影響を及ぼす可能性が示唆された。
ウォークインやふれあい展示で来園者がどのような印象を受けたのか、飼育員の話や、放し飼いされている動物の動きなど、どのようなことに注目したのかを明らかにするため、展示を体験した来園者に対するアンケート調査を実施した。Google Formまたは紙面での回答を呼びかけ、調査期間でそれぞれの展示で50〜127人分の回答を得ることができた。
今回の調査では野生動物のウォークイン展示、家畜動物のふれあい展示をそれぞれ異なる動物園で観察し、展示を行う職員の狙いや来園者の展示を見た感想、観覧のパターンなどを記録できた。今後は、これらのデータをもとにそれぞれの展示が持つ共通点や相違点を明らかにし、各展示による来園者の動物観形成の効果を検討する。
Stephen R. Ross, Leah M. Melber, Katie L. Gillespie, Kristen E. Lukas. 2021. The Impact of a Modern, Naturalistic Exhibit Design on Visitor Behavior: A Cross-Facility Comparison.
川端祐人. 本田公夫.2019.『動物園から未来を変える-ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン』58-103.
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