移民先で生成される「インドネシア」表象
研究全体の概要 本研究は、インドネシア出身者が表象する「インドネシア」に着目し、各移民コミュニティにおいて「インドネシア」がいかに位置付けられているのかを明らかにする。本来インドネシアとは、想像から成る政治的な共同体である[アンダーソン2…
日本は第一次産業の後継者が減少している。酪農家の数も減少傾向にあり、後継者問題に悩んでいる。酪農は生き物を飼育することから、地域の信頼を得ることが必要となる。そのため、酪農家を新しく獲得することは容易ではない。本調査で訪れた足寄町は、放牧の普及と新規酪農家の獲得が成功した町(荒木 2020)である。足寄町を拠点としながら、酪農家を対象にヒトと家畜の関係性や、日常生活の過ごし方、地域の取り組みや酪農の位置付けについて調査を行う。そこから、動物や地域との関わりの諸相を明らかにする。
アフリカ乾燥地域における遊牧社会では、家畜に重点が置かれている。遊牧社会では、日常生活で行われる遊びや手伝いなどの活動を通して家畜管理技術や家事などの知識を獲得する。しかし、生業に関わる機会も以前と比べると減っている。日本でも第一次産業の後継者が減少し、酪農の後継者も減少、後継者問題に悩んでいる。酪農は生き物を飼育することから、地域の信頼を得ることが必要となる。そのため、酪農家を新しく獲得することは容易ではない。今回訪れた足寄町は、放牧の普及と新規酪農家の獲得が成功した町である。サポートセンターや酪農家への調査を通して、新規酪農家の希望や苦悩、また各所の取り組みについて調査ができるのではないかと考え選択した。 本調査では、北海道の新規酪農家へのファームステイを通して、家畜との関わりや日常生活を観察し、聞き取り調査を行う。さらに、新規酪農家やサポートセンターへの聞き取り調査などを行う。
本調査では、北海道にある酪農家宅に合計で2週間滞在し、調査を行った。他の期間では、酪農家へのインタビューや地域の人への聞き取り調査、また活動についての観察も行なった。さらに、町の図書館にて、町の歴史や酪農等に関する資料収集も行なった。
今回の調査を通じて、酪農家の子どもの観察から、幼少期における家畜との関わりが後継に関与しているわけではないこと、親が子どもに後継を期待していないことが明らかになった。
放牧酪農家や子どもはウシの特徴を覚えて、名前を付けていた。搾乳前に放牧地のウシを牛舎へ移動させるのだが、日によってウシが入る場所は違う。そのため、名称を各個体につけることによって意思疎通ができるように工夫が行われている。子どもも積極的にウシ追いや清掃などの手伝いをするが、彼らの間には一定の距離が保たれている。搾乳中に繋いであっても、牛舎には入ってもウシの歩くスペースには入らない。「ウシが好き」という子どもでも、親の大変そうな姿を見て酪農家にはなりたくないと言う。鶏を飼いたいという子もいた。親が子どもに絶対に酪農家になって欲しいという期待も見られない。
地域との関わりは、偏りがあるように見られた。新規就農者は新規就農者、先代の酪農を継いだ人は後継の人と多く関わりを持っていた。しかし、酪農家だけでなく、ゲストハウス、カフェ、チーズ職人や道の駅、さらには給食など、地域全体で酪農家との交流を多く持っていることも分かった。
今回の調査では、地域全体として活性化するひとつの要素として、酪農が組み込まれていることが分かった。私が出会った酪農家はやりたくてやっている人、やらなければいけない人の2種類に分かれた。ウシが好きだから、仕方なくなどの動機は違っても、熱意に満ち溢れている。だが、熱意に満ち溢れた酪農家の子どもでウシが好きでも、将来酪農家になりたいわけではない。
今回の調査では、子どもたちの手伝いや遊びの様子を動画に収めるだけでなく、日々の出来事を日記に書き、家畜との関わりについて記述した。さらに、新規就農した人の思いや後継者の思い、ウシと暮らすことについてもインタビューを行った。しかし、新規就農された方との関わりが多く、後継された方の話が比較的少ない。その中で、幼少期の体験が今に繋がっていると話してくださる方も多くいた。現在、テレビやゲームなど、関わる世界が広くなっている。酪農家の子どもが将来目指していること、興味を持っていることについて学校へのアンケートから明らかにし、その要因がどこにあるのかについても検討したい。また、季節によっても家畜との関わりについては、放牧かつなぎかなどの差異が見られる。そのため、長期的に滞在して形態による関わりの変化についても追加調査を行いたい。
荒木和秋,2020,『よみがえる酪農のまち――足寄町放牧酪農物語』築波書房.
相馬寿成・木南莉莉,2008 ,『酪農経営における無形資産の継承問題――Fファームを事例として』新潟大学の農学部研究報告61(1);17−26.
田暁潔,2017,「日常生活の中の遊び――ケニアの牧畜民マサイ」清水貴夫・亀井伸孝編『子どもたちの生きるアフリカ――伝統と開発がせめぎあう大地で』昭和堂,54-67.
肥田野修・平泉光一,2012,『農業後継者の確保に関する研究――学童期の農業体験が就農に及ぼす影響』農業普及研究17(1);70-79.
Xiaojie, T. 2016. Day-to-Day Accumulation of Indigenous Ecological Knowledge: A Case Study of Pastoral Maasai Children in Southern Kenya. African Study Monographs. 37(2):75-102.
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