ニジェール国ニアメ市における家庭ゴミの処理と再生
対象とする問題の概要 ニジェールの首都ニアメでは2019年7月のアフリカ連合総会など国際イベントに合わせてインフラ整備が急速に進んだ。首都の美化は政治的優先課題に位置づけられ、政府が主導する大プロジェクトとなり、街路に蓄積していた廃棄物は行…
東南アジアの内陸国であるラオスは、山岳地帯が国土の多くを占めている。道路輸送が全モードの輸送量のうち大半を占めるにもかかわらず、道路の舗装率は周辺国に比べて低い。時間と費用共に輸送コストが高く、大規模なサプライチェーンも発達し難い状況にある。小口荷物の輸送に関しても、宅配業が増加したのはこの3年の間で、郵便はほとんど利用されていない。そうした状況の中、全国の貨物輸送の一部を担っているのが長距離バスである。ラオスでは公共交通機関である長距離バスが旅客以外にも、大量の商品や小口荷物を輸送する。輸送インフラが貧しいが故にバスが利用されていると考えられるが、なぜバスは貨物輸送の需要に応えられるのだろうか。世界各国で物流や配送の最適化が課題とされている現在、ラオスの貨客混載の事例は輸送に関する諸問題を解決するための参考となると考える。
本研究の問いは、なぜ公共交通機関の長距離バスが輸送インフラの一部として機能できているのか、である。問いに答えるために、まずバス輸送の実態を明らかにする必要がある。本調査は、長距離バス輸送のシステム、特に輸送方法や経営形態を明らかにすることを目的として実施した。調査場所は、首都ヴィエンチャン特別市にある、南部方面行きバスターミナル(以下、BT)と北部方面行きBTの2つである。各BTでは、常に荷物を積載したトラックが出入りし、バスドライバーたちがそれらの荷物をバス車内や屋根の上に乗せて行き先のBTまで輸送する。調査では、荷主とバスドライバーやオーナーのやり取りを観察し、不明な点は彼らに適宜質問しながら輸送方法を明らかにした。また、経営形態に関してはバスドライバーやオーナーに聞き取り調査を行った。
まず、バスによる貨物輸送の方法に関して述べる。最初に、バス輸送の利用者である荷主が荷物をBTへ運び入れ、バスドライバーたちと荷物と輸送料の確認をする。輸送料の決定は各オーナーやドライバーに委ねられるが、荷物の大きさや重さ、運ぶ距離によっておおよそのレートが存在する。輸送料は先払いも可能だが、多くの場合が到着後に荷物の受取人が荷物と交換に支払う。BTで預けられた荷物はドライバーたちによりバス車内や屋根の上に載せられる。荷物の種類は様々で、野菜の大袋や大型家電などを屋根の上に引き上げるのはかなりの力仕事である。バスで輸送される荷物の受け渡しのほとんどがBTで行われるが、走行ルート上で行われる場合もある。例えば、道路の脇に荷主が待機していたり、道路沿いにある商店に輸送した荷物を渡したりする。つまり、バス輸送は荷物の種類に制限がなく、個々の荷主に適宜対応可能な輸送方法であり、定期的に運行されるバスは小規模な荷主にとって便利で適切な輸送手段といえる。
次に、バスの経営形態について述べる。調査の結果、ラオスのバス経営には2つの特徴があることがわかった。1つ目は自営業者が多いことである。バス会社もあるが、個人でバスを所有し、運行しているオーナーやドライバーが多くいた。隣国タイではバス事業は基本バス会社が行なっており、自営業が多いことはラオスの長距離バスの一つの特徴といえる。2つ目はファミリービジネスとしてバス事業を行なっている人が多いことである。これは自営業だけでなくバス会社にも当てはまる。例えばバスのオーナーが妻でドライバーが父と息子であったり、親族同士で同じバス会社に入ったり組合を組んだりしている場合である。家族で自営業としてバスを運行する場合、家族の結婚式などでバスを運行する時もある。公共交通機関を運行する主体は個々の家族なのである。
以上の結果より、公共交通機関の長距離バスが輸送インフラの一部として機能できているのは、主に家族で経営されていて運行に関して自由度の高い長距離バスが、小規模な荷主の必要とする輸送を実現できているからといえる。
今回の調査では、公共交通機関であるバスが個々の家族や親族によって支えられており、そのバスがラオスの輸送インフラとして機能していることが明らかとなった。このシステムは小規模荷主の需要に応えることができ、労働人口の大半を自営業が占めるラオスにおいて、人々の経済を支える機能を果たしているといえる。今回は現状のバスドライバーやオーナーによる経営形態を中心に調査を行なったが、調査を通してバス輸送を形作っている他の様々な要素の存在も認識した。例えば、道路整備による環境の変化、車両の入手や整備、バスドライバー間の情報共有、家族間の役割分担、出発前の安全祈願などの信仰である。今後の調査では、バス輸送の変遷とドライバーたちの実践を明らかにし、バスという人々が作り上げる輸送システムから見たラオス社会の一側面を明らかにしたいと考える。
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