アフリカ地域における企業労働文化について/モザンビーク共和国の製造業を事例に
対象とする問題の概要 近年アフリカ諸国は高い経済成長率を記録してきたが、その多くが天候や国際価格の変動の影響を受けやすい一次産品に依存したものであり、産業の多角化は進んでいない。モザンビークも1992年の内戦終結以降、諸外国からの投資によ…
ラオスでの障害者数(5歳以上)は、2015年時点で約16万人と全人口678万人の2.8%を占めており、不発弾事故、先天的遺伝要因、感染症、交通事故など様々な要因で障害をもった障害者が生活をしている[1]。このような障害者への支援は、1990年代から旧ソ連・東欧の崩壊による社会主義圏との協力関係の鈍化に伴い国際開発援助が外部から流入したことで、現在に至るまで国際NGOが主体となって障害者支援活動が実施されている。しかし、医療・保健サービスや支援体制が整備されている一方で、サービスにアクセスできる障害者が限定的であり、且つ充実した保健サービスは郡や県レベルでしか受けられないといった課題がある。また、ラオスの障害者のデータや先行研究が限られており、ラオスの障害者の実態が把握できていない状況である。
[1] Results of Population and Housing Census 2015〈https://lao.unfpa.org/sites/default/files/pub-pdf/PHC-ENG-FNAL-WEB_0.pdf〉(2023年7月20日)
USAID LAO PDR GENDER ANALYSIS ON DISABILITY GENDER ANALYSIS FINAL REPORT 2018〈https://pdf.usaid.gov/pdf_docs/PA00SZS5.pdf〉(2023年7月20日)
本研究は、既存のデータや支援体制の陰に隠れたラオスの障害者の実態を知るため、当事者たちの視点から障害者と他者や当事者同士の相互関係をみることで、次の問いを明らかにする。1つ目は、ラオスの障害者は誰によって支援・ケアをされてどのように生活しているのか。そして、2つ目は支援体制などが十分でないラオスの障害者が生活をする上で生きづらさを抱えているとしたら、それはどのようなものなのか。これらの問いを明らかにすることを目的とする。そこで、今回の渡航では、ラオスで障害者支援活動を行うNGOや当事者団体、リハビリ施設で勤務している、または支援を受けている身体障害者(視覚、聴覚、四肢不自由)、そしてNGO職員・支援団体職員を中心に聞き取りを実施した。身体障害者に限定した理由は、調査遂行のためにラオス語での意思疎通が可能であることを前提とし、知的・発達・精神障害といった障害者を調査対象に含めなかったためである。
本研究では、首都・ヴィエンチャン特別市にあるアジアの障害者活動を支援する会のオフィスと団体運営カフェ、ラオス障害者女性開発センター、Cooperative Orthotic and Prosthetic Enterprise(COPE Laos)、UXO Lao National Officeへ訪問・見学、聞き取りを行った。また、シェンクワン県のポーンサワン郡にあるラオス障害者協会・シェンクワン支部の職員、同県にある視覚障害者のモン族が経営するマッサージ店へも同様に聞き取りを行った。
この聞き取りの中で、各々の障害の種別や障害をもった時期、出身地、支援に辿り着いた経緯やそれまでの生活等について情報を得ることができた。その中で次の知見を得られた。第一に、ラオスの障害者は同居者家族によってケアをされていることだ。本研究の調査対象の障害者は、全員が何らかの支援に辿り着いている人たちである。しかし、支援にアクセスできた場合でも障害者自身がひとりで独立して生活するわけではなく、支援団体での雇用や英語・手話、ITスキル、マッサージといった学習サポートの支援を受けながらそれら支援を基に収入を獲得しつつ、同居者家族らと共に生活をし、身の回りの世話や移動の補助など家族からのケアを受けている。第二に、ラオス社会に生きる障害者が抱えている生きづらさは、個人の属性、例えば、障害の種別や重度、民族、性別、家族構成や家庭環境、出身地などによって異なり、多岐に渡っていたことだ。これらは、ラオスに限らず他地域でも見受けられる結果であるが、ラオス社会の特徴が見えやすい個人の属性として、女性身体障害者が挙げられる。彼女らは、女性は男性に従順で家庭内の仕事は女性が担うべきだとする性別分業役割が明確なラオス社会のジェンダー規範の中で、障害者である故にそれらを担えないため婚姻等で課題を抱えていた。今回は、対象を身体障害者と大きく設定して調査を行ったが、今後は女性身体障害者に着目し彼女らの視点からラオス社会を捉え、障害者の現状・実態をより明確にしたい。
本研究の調査では、ラオスの障害者支援団体や当事者団体、また身体障害者たちとの繋がりを作ることができた。一方で、さまざまな障害者から聞き取りを行うことで障害者の全体像や実態を把握しようとデータの量に重点を置いたことで、事前に準備したインタビュー項目に沿った聞き取りを短時間で実施した。そのため、個々のライフヒストリー等の具体的な聞き取りや日常生活の参与観察が十分に行うことができなかった。また、彼らの障害があることで経験した困難や苦労を直接的に聞き取りしてしまったため、彼らの声を十分に引き出すことができなかった。今後は聞き取りの仕方だけでなく、一人ひとりの身体障害者の日常生活を共に追うなど調査方法の面の検討を行う必要がある。
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