Nepal-Japan Relations: A Study of Diplomacy and Development Cooperation Since the 1960s
Research background Nepal is as one of the least developed countries with the lowest per capita income and human devel…
カメルーンを含む中部・西アフリカのなかでウシは重要な動産である。特にウシの交易は極めて大きな経済規模をもっている。18世紀から19世紀に、牧畜民フルベがこの地域のイスラーム国家建設の主体として立ち上がった背景には、人びとが有するウシに非常に高い商品価値があり、彼らがウシ交易の中心的存在であったということが考えられている[嶋田2010]。
現在でも、都市化による食肉需要の高まりによって、ウシは高い商品価値をもって取引されており、そうした経済規模をもっているがゆえに、ウシの交易には独特な慣行が存在している。しかし、どのような人が交易に参入し、どのような取引の方法やプロセスがあり、どのような意味や論理に支えられ、かつどのウシがどれくらいの経済的な価値をもって交易されているのかといった点については、まだ解明されていない。
上記の議論を踏まえ、本研究では、カメルーン・ンガウンデレにおけるウシ商人の商慣行、とくにNyamandéと呼ばれる「つけ」の慣行に着目して、ウシ交易の実態の一端について明らかにすることを目的とする[1]。
調査地であるカメルーン北部に位置するアダマワ州の州都ンガウンデレとその周辺は、カメルーン最大のウシ生産地であり、かつ隣国ナイジェリアやチャドからガボン、赤道ギニアにかけてのウシ流通の交差点でもあることから、ウシ交易において重要な地域である。
調査では、ンガウンデレから約100km圏内に位置するウシ市9箇所にて、ウシの交易に携わる商人の属性についての聞き取りと、取引慣行を明らかにするために2名の商人に対してそれぞれ約2ヶ月間の追跡調査と参与観察を実施した。
[1] 文中の現地語は全てフルフルデ語、カメルーン・ンガウンデレ地域方言で表記。
今回の調査では、ウシ交易の実態について、商人たちの取引を具体的に観察することで、その商人層や取引の規模、方法やプロセス、ウシのおおよその経済的価値を明らかにすることができた。他方で、商人層をPalkéに限って観察したことで、資本をもたない「つけ」を支払う商人層の実態や、なぜ銀行やモバイルマネーが普及した現在でも現金にこだわって取引されるのか、という問いは残されたままである。
また、先述の「未払いのうちに他人に売却し利益を得る」ことをはじめとして、市には暗黙のルールがあり、「アッラーの名をいう」「ウソをついて価格を高く設定する」「カネをくすねる」「つけの際に利子をとる」ことは禁止されていると商人たちは話すが、実際には、それらはほとんど守られていない。
こうした現状を踏まえ、次回の調査では調査範囲を広げつつ、ウシの取引慣行が維持される意味や論理に注目しながらデータを集める必要がある。
嶋田義仁.2010.『黒アフリカ・イスラーム文明論』創成社
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