南アジアにおけるイブン・アラビー学派
対象とする問題の概要 本研究では、イスラームの代表的スーフィーであるイブン・アラビー(d. 638/1240)の思想が、南アジアにおいてどのように受容されてきたのかを明らかにすることを目指す。その際、19-20世紀インドのウラマー・スーフ…
熱帯林生態系において、種子散布は重要な生態学的プロセスである。現在、種子散布者となる多くの動物が絶滅の危機に瀕しており、森林更新機能への深刻な影響が懸念されている。そこで、種子散布を通した動植物間相互作用のネットワークを記述し、各散布者の相対的な重要度を評価することで、散布者の絶滅による群集全体への影響が予測されてきた。これまでの研究では、鳥類や哺乳類など、特定の動物分類群を対象としてネットワークが調べられてきたが、実際の生物群集では様々な動物種が種子散布を行う。従って、散布者の絶滅による影響を正しく推測するためには、群集レベルでの包括的なネットワークを調べる必要がある。マダガスカルは、最も人為的撹乱に晒されている熱帯林生態系のひとつであり、多くの脊椎動物が既に絶滅している。しかし、これまで種子散布に関する研究は驚くほど少なく、散布者としての役割が明らかになっていない分類群も存在する。
群集レベルでの包括的な種子散布ネットワークを調査し、散布者の相対的な重要度を評価することで、散布者が絶滅した場合の影響を予測する。そのために、マダガスカル北西部の熱帯乾燥林において、3つの相互補完的な手法(①生体捕獲調査による糞中種子の確認、②カメラトラップ及び目視による観察調査、③現地住民へのインタビュー調査)を用いて、動植物間の種子散布相互作用についての情報を収集し、ネットワークを記述する。
本調査で検証したほとんどの樹種において、動物による果実の採餌、持ち去りが観察された。一般的に、熱帯雨林に生育する植物種は、多くが種子散布を動物に依存しているといわれているが、マダガスカルの熱帯乾燥林においても同様の傾向が確認できた。主な散布者は、チャイロキツネザル(Eulemur fulvus)などの霊長類、オオアシナガネズミ(Macrotarsomys ingens)などの齧歯類、マダガスカルヒヨドリ(Hypsipetes madagascariensis)などの鳥類であった。中でも、齧歯類と鳥類による種子散布は、これまで同国の種子散布系でも明らかになっていなかったため、貴重なデータが得られた。
樹木の結実期は多くの種でばらつきがあり、全調査期間に渡り、1種も結実していない期間は観察されなかった。散布者となる動物側から考えた場合、時期を選ばずにいつでも果実を利用できる一方、植物側から考えた場合も、同時期に結実する他種が少ないことで、より多くの果実を散布してもらえる可能性がある。これは、プロット内に生育する樹木が、特定の樹種の果実を好んで採餌するスペシャリストな散布者よりも、幅広い樹種の果実を採餌するジェネラリストな散布者に主に散布されていることを示唆している。
今回の調査だけでは、以下の理由により、完全な種子散布ネットワークを記述するまでには至らなかった。まず、マダガスカルでは今回の渡航期間(11月〜3月)は雨季に当たり、乾季(5月〜10月)とは結実する樹種が異なるため、乾季に結実する樹種の散布者を特定することができなかった。次に、調査手法のひとつであるインタビュー調査について、他の調査との兼ね合いから時間的な制約を受け、実施することができなかった。しかし、調査地の選定や予備調査など、本調査に向けた準備を進めることができた。
今後、乾季に再度同様の調査を行い、1年を通して、森林内に生育する樹種の散布者を特定する。加えて、調査地周辺の現地住民に対するインタビュー調査を実施することで、野外観察だけでは観察できなかった種子散布相互作用の情報を収集する。そして、マダガスカル熱帯乾燥林における様々な動物分類群を含めた群集レベルでの種子散布ネットワークを記述する。
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