Groundwater-intrusion related in Rupat Peatisland, Riau, Indonesia
Research background Tropical peatlands are subjected to anthropogenic disturbance, which deteriorates the environment a…
世界的に都市災害が増加、激化する中、災害時の被害軽減のためには構造物対策だけでなく行政と連携した地域コミュニティレベルの防災活動が重要であると言われている[辻本2006]。ジャカルタで顕著な都市災害としては洪水が挙げられ、その頻度や規模は2000年代以降激化しており社会問題となっている。ジャカルタには行政と密接に関わり、住民統制組織、相互扶助組織として機能してきた地域コミュニティであるRT/RWが存在している。それらは頻発する洪水に対するレジリエンス強化のための主要なアクターであると考えられ、それに関する実証研究を行うことは防災・地域づくりの観点から重要である。
博士予備論文ではジャカルタの住民組織である隣組(RT)町内会(RW)における洪水対策を比較することで、防災コミュニティとしてのRT/RWの有効性と現状の問題点を明らかにしたいと考えている。また地域コミュニティの形成において、RT/RWという官製の住民組織がどのような役割を果たしているのかを明らかにしたいと考えている。今回はそのためにインドネシア語の習得とジャカルタにおける洪水対策を含むRT/RW単位の活動についての聞き取り、かつそれらの活動への参与観察による情報収集を目的としている。
東ジャカルタ市のチリウン川沿いに位置するカンポンムラユ地区は、2015年にジャカルタ州政府の洪水対策の一環として河岸集落の強制立ち退きが行われた地区である。当該地区は洪水頻発地区であり、洪水対策の調査地として適していると考え調査を行った。以前の河岸集落跡地には新たに幅10mの道路、堤防、堤防内の内水氾濫防止用のポンプ小屋が設置されている。これらができたことにより洪水の頻度は減ったが、現在でも洪水が発生することはあるという。強制立ち退きの対象者は地区内にある集合住宅へ移住している。河岸集落の強制立ち退きと集合住宅への移住に関しては従前居住地区との関係や仕事の喪失が問題視されているが[Nurul et al. 2018]、カンポンムラユ地区は地区内の集合住宅に移住したこともあり、現在でも地区内で店を開くなどの形で関係を保っている事例も見受けられた。
また集合住宅への移住に関しては、コミュニティの喪失も問題視されてきた[Nurul et al. 2018]。洪水対策を総合的に考える上で、立ち退きと移住は避けては通れないものであり、立ち退き先となる集合住宅においてRT/RWが果たす役割を調査したいと考え、RT/RWが存在する東ジャカルタ市の州営集合住宅でも調査を行った。調査を行った集合住宅は2003年に完成したものである。集合住宅におけるRT/RWの役割を調査するため、RT/RWが関わる3つの行事(RT長選挙、イドゥルアドハ[1]、独立記念行事)に参加した。RT長選挙はRT内の住民が集まってご飯を食べながら終始和やかな雰囲気で行われていた。イドゥルアドハの行事は、集合住宅内のモスクの委員会が中心となって行われた。独立記念行事は8月12日から8月26日のおよそ2週間かけて行われた。企画運営はRTの住民で組織された青年会によるもので、RT内の住民同士で競い合う競技や地域内を仮装して練り歩くカーニバル等が行われ、RT/RW内の親交を深める機会となっていた。
[1] イスラームの2大祭の1つ。犠牲祭とも呼ばれ、動物の供犠を行う。
反省点としては、アンケート等を用いた定量的な調査はできなかったことだ。次回調査を行う際は、参与観察だけではなく、定量的な調査方法を用いた地域の把握を試みたい。また、密集住宅地においてRT/RWの行事には直接参加できず、集合住宅と密集住宅地の比較ができていなかったことも課題として残っている。
今後の方針としては、公営集合住宅におけるRT/RWのあり方と密集住宅地におけるRT/RWのあり方を比較していくことで、空間的な環境が異なる両者における住民組織の役割の連続性と非連続性を明らかにしたい。そうすることで、さまざまな形態が存在する都市居住において、RT/RWという共通の住民組織がどのように地域の特性に適応し、どのような役割を果たすのかを、洪水対策という枠にとらわれず多角的に検討していきたい。
辻本哲郎. 2006. 豪雨・洪水災害の減災に向けて ソフト対策とハード対策の一体化. 技報堂出版.
Nurul Wd. 2018. The Dilemma of Relocation Community in Rusunawa at Jakarta. International Journal of Scientific Research And Education. 6.
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