牧畜社会における技術や知識の学び ――酪農家の生活に着目して――
研究全体の概要 日本は第一次産業の後継者が減少している。酪農家の数も減少傾向にあり、後継者問題に悩んでいる。酪農は生き物を飼育することから、地域の信頼を得ることが必要となる。そのため、酪農家を新しく獲得することは容易ではない。本調査で訪れ…
世界の養殖エビの生産量は1985年からの20年間で約13倍に増加した。この背景には、日本でのクルマエビ、台湾でのウシエビの完全人工養殖の確立、そしてその技術を用い、大量のエビを高密度で養殖する集約的養殖の発展がある。この集約的養殖の弊害として、マングローブ林の皆伐、エビのストレス増加による病原菌の蔓延、池底でのヘドロの堆積などがあり、結果、養殖池が放棄される事例が発生している。本研究では、養殖池の放棄が問題になっている東南アジアにおいて、現状を把握すると同時に、放棄へと繋がらない持続的な養殖形態はどのようなものかを明らかにする。また、東南アジアにおける調査の前段階として、クルマエビ養殖が古くから行われている熊本県天草市で、エビ養殖の歴史的変遷を把握し、放棄へと繋がる問題に対してどのように対処してきたのかを明らかにするとともに、その立地や飼育密度、餌の種類などを調査する。
調査目的は、熊本県のクルマエビ養殖の実態を明らかにすること、クルマエビ養殖の歴史的変遷を明らかにすることである。調査者の予備論研究では熱帯アジアのマングローブ林伐採後にひらかれた養殖池の放棄を扱う。放棄の主な要因はウイルス等の病原菌の蔓延や、養殖による水質・土壌環境の悪化が挙げられる。このように、養殖池の放棄とエビ養殖の形態は非常に密接に結びついている。エビ養殖業が日本でどのように形態を変え、現在に至るかを調査することは予備論研究を行う際にも十分に比較する価値があると思われる。また、エビ養殖の実態把握として、その立地、規模、人員、haあたりの売り上げ、エビの種類、餌や抗生物質の種類等を調べる。
調査対象とした事業者は4つの養殖池を有し、2021年9月時点でうち3つが稼働中であった。どれもクルマエビの養殖池で、面積は2つが0.45ha、1つが0.75haである。養殖池は海面より高くに位置し、潮汐の作用を受けない陸上養殖となっている。取水先は各池一箇所で、海水をポンプ揚水し、ネット等で濾過して取り込む。排水口は、各池において池底に1箇所、側面に2箇所の計3箇所あり、重力排水する。
基本的に1日1回(稚エビ時は3回に分けて)、小型船舶を使って、人力で餌を撒く。餌には動物質性飼料、植物性油カス類などが含まれる株式会社ヒガシマルのバイタルプローンを用いる。時間帯は、夜行性のクルマエビの活動が活発となる15時〜17時に行われる。夜間には水中の溶存酸素濃度が低下するため、餌まきは行われない。給餌量は水温、エビの体重によって決定される。
収穫は大きく、夏エビと冬エビの収穫に分けられる。今回の調査では冬エビの収穫を観察、実践した。夏エビと違い、冬エビは電気網を用いて収穫する。夏エビの時期は外気温が高く、エビが傷みやすいため外傷を極力避けるよう籠を用いて収穫する。冬エビの収穫は9月中頃から12月末にかけて行われる。出荷ピークは年末のお歳暮の時期であるため、年末に近くなるにつれペースが上がる。9月下旬時点では、1日約100〜120kg(1回あたり約8kg)を水揚げする。
出荷作業は収穫の翌朝7時より、養殖場に隣接した加工場で行う。午前11時の運送業者の到着に合わせ、活きエビとして出荷するエビの箱詰めが行われる。水揚げされたクルマエビは主にA品、B品、C品(上がり)の3種類に分けられる。A品は活きエビとして出荷するもので、体長・体重に合わせ大、中、小に分けられ、おがくずと保冷剤とともに箱詰めされる。一方、B品は真空パックに入れ、冷凍エビとして出荷される。C品はパテ(ジャム状製品)に加工され出荷される。
国内での調査と国外での調査を考えている。国内では2021年12月末に同養殖場にてピーク時の収穫量、出荷量、そこでの人員、また9月時点と比較した際の一匹あたりの体重や価格の聞き取り調査を行う。また、今回調査が行き届かなかった天草市の各養殖池の立地と同養殖場の立地について聞き取りやGISを用いた調査を行う。可能であれば、養殖池の水を抜き乾燥させる2022年2月〜3月ごろにも訪問し、排水後の養殖池の状態やヘドロの処理方法などについても追加調査したい。また、国外での調査ではタイおよび、フィリピンの養殖池、放棄養殖池を訪れ、稼働している養殖池においては、その立地、規模、人員、haあたりの売り上げ、エビの種類、餌や抗生物質の種類等を調べる一方、放棄養殖池においては、放棄の要因や植生、土壌の状態、また地域住民の認知について調査を行いたい。
村井吉敬. 1998. 『エビと日本人』東京:岩波書店.
『at』編集室.2006.『その後の『エビと日本人』報告:持続可能なエビ養殖事業をめぐって:特集 / オルター・トレード・ジャパン』東京:太田出版.
村井吉敬. 2007. 『エビと日本人II 暮らしのなかのグローバル化』東京:岩波書店.
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