エチオピアにおける伝統的ダンスの継承と新たな表現の創造
対象とする問題の概要 アフリカにおいて、伝統的ダンス(以下、「ダンス」と表記)は結婚式、収穫祭などコミュニティにおける冠婚葬祭の重要な場面で演じられるとともに、コミュニケーションや娯楽のツールにもなっている。エチオピアの首都アディスアベバ…
サハラ以南アフリカは現在、世界で人口が最も増加している地域である。アフリカの都市部では、農村から都市への人口移動によって爆発的に人口が増加し、その人口増加に対応した居住環境や交通、教育、衛生など多くのインフラ整備が課題になっている。調査対象国であるウガンダはサハラ以南アフリカ諸国のなかでも特に人口増加率が高く、首都カンパラを中心とした首都圏では2000年に123万人だった人口が2020年には329万人へと3倍ちかく増えている(UN 2022)。都市外縁部では新たな住宅地の開発が進み、新規流入者の受け皿となっているが、行政による都市計画や住宅供給は需要に間に合っておらず、個人や民間企業の開発によって無秩序に住宅地が広がっている。アフリカにおける市街地の形成過程における土地所有制度のあり方や土地利用の変化、インフラの整備について明らかにすることは、多くの問題をはらむ都市化の実態を理解するうえで重要である。
本研究の目的は、ウガンダにおける都市および都市周縁部で、新たに形成された市街地を対象として、その地域がどのように都市へと変容していったのか、土地利用の変遷や社会の変容を記述することである。今回の渡航では、首都カンパラを中心とした都市および都市化の概況の把握、調査地に関する地図や人口統計、行政文書など利用できる資料や文献を収集することで、次回の渡航に向けた予備調査を実施した。当初の予定ではウガンダ東部の都市ムバレおよびその周辺地域においても調査を試み、調査地を決定する予定としていたが、入国の前日である9月20日にウガンダでエボラウイルス病(エボラ出血熱)の感染者が確認され、その後、感染地域では都市封鎖が実施された。10月24日にはカンパラでも陽性者が隔離されたこともあり、予定を変更して、ウガンダ東部に行くことを断念し、日本へ11月2日に帰国することとなった。滞在日数は、当初の予定である90日から42日に短縮した。
今回のフィールドワークでは、カンパラ首都圏において北部に向かう幹線道路沿いを集中的に訪問し、各地域の地形や土地利用に着目しながら観察した。カンパラ都市圏は比高50mから100mほどの大小の丘陵が市中に存在し、都市空間は丘陵の上部か下部かによってその特徴が大きく異なっていた。都市中心部では幹線道路は丘陵を避けるように谷沿いにひかれていることが多いが、外縁部では丘の上部を通るかたちで一直線になっている。
集落は丘陵の頂上付近の幹線道路沿いにあることが多く、市場や乗り合いバスの乗り場、診療所、学校、スーパーマーケットなどの中心機能が集中して立地する傾向にあった。都市の中心はこのように丘陵の頂上とその周辺に形成され、それを取り囲むよう、丘陵の斜面上部には、敷地の大きく豪華な住宅が多い。都市の近隣で水はけの悪い谷底や丘陵の下部では、低層住宅が密集して立ち並ぶことがほとんどだが、外縁部に向かうにつれて農地の割合が高くなる。それぞれの丘陵ごとに都市化の進展を検討すると、丘陵の上部から新たな住宅建設が始まり、道路や水道、電気などのインフラが整備されたのち、下方にむかって開発が進んでいく。このような開発のプロセスから、都市外縁部では丘陵の上部で点在するように新しい都市が形成され、地形と結びついた特異な景観がつくりだされている。また、市街地は単に中心部から外縁部へと放射状に広がっているわけではなく、それぞれの丘陵の頂上を中心に多核的に広がっていると指摘することができる。
今回の調査では、都市化の要因として人びとの農村から都市への移住に関心があるにもかかわらず、主に都市の景観を地形との関連で検討することが中心となり、実際に特定の地域の住民にインタビューし、話を聞くことができなかった。急きょ、調査期間の短縮が決まったこともあり、都市の景観を観察し、住民とは軽く話す程度に終始したが、今後のよい経験となった。また、ウガンダ政府やカンパラ市といった行政が立案する都市計画や土地保有制度に対する理解が不足しており、具体的にどのように計画され、開発されているかについて文献や行政資料から明らかにしていきたい。
次回の渡航までに、カンパラの都市開発における具体的な行政的手続きについての理解を深める予定である。また、カンパラ市の近郊における地形と土地利用との関係についてGISによって数値標高モデル(DEM)と衛星写真を用いた空間分析を行う。
World Population Prospects, United Nations Department of Economic and Social Affairs, 2022
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