インドネシア大規模泥炭火災地域における住民の生存戦略 /持続的泥炭管理の蹉跌を超えて
対象とする問題の概要 インドネシアは森林火災や泥炭の分解による二酸化炭素の排出を考慮すれば、世界第3位の温室効果ガス排出国となる(佐藤 2011)。泥炭湿地林の荒廃と火災は、SDGsの目標15 「陸の豊かさも守ろう」に加え、目標13 「気…
本研究は、ナミビア北西部クネネ州(旧カオコランド)に居住するヒンバ社会の「伝統的」及び「近代的」装いを記述するものである。ヒンバはナミビアの代表的な民族であり、しばしば美化されたアフリカのアイコンとして描かれる。腰に羊の皮や布のエプロンをつけ、手足、首、頭などに様々な装飾品を身に着け、髪や肌にはオチゼという赤い土を使うことで知られている。他の民族と比較的隔離された生活をしているが、近代化の波が押し寄せ、ヒンバの装いにも多大に影響を及ぼしている。先行研究ではこうした変化に対して「伝統」と「近代」の二項対立的な記述が目立ち、「伝統的」ながらも「現代的」なアイテムを柔軟に取り入れている様相に関する記述が乏しい。ヒンバは伝統的な生活様式に忠実な人々として描かれ、同じルーツを持つものの「現代的」な衣服を取り入れるヘレロの人々としばしば対比されてきた。
本研究では、近代化の影響下にあるヒンバの人々が装いという営みをどのように実践しているのか、その実態を明らかにし、記述することを目的とする。ヒンバの村に一定期間滞在し、観察とインタビュー調査によりデータを収集する。また、同じルーツを持つヘレロの村にも滞在し、その生活様式や衣服、ヒンバとの関係性を調査する。村だけでなく、クネネ州の州都オプウォで生活するヒンバや、他の民族へのインタビュー調査をおこなう。
従来、地域社会の伝統的な衣服は、固定的で変化しにくいものとしてイメージされてきた。本研究は、「プリミティブ」なイメージで描かれるヒンバのリアリティを記述することで、第三者から向けられるステレオタイプ的なまなざしからの脱却を試みるものである。
首都にて調査許可を取得した後、クネネ州にて調査を開始した。今回の調査は大まかに3つに分けられる。
1つ目の調査は州都オプウォから車で約30分のヒンバの村であるオヴィニャンゲでおこなった。オヴィニャンゲ村は州都から比較的近いため、「伝統」と「近代」の入り混じった装いを調査するのに最適な場所である。観光客もしばしば訪れるため、観光客向けの装いと普段の装いの違いを見ることができた。知り合いに紹介してもらったヘレロ出身の通訳を雇っていたので、常に同行してもらい、インタビュー調査を都度実施した。村で生活する中で、ヒンバが普段身に着けている装飾品を全て記録することができた。村人へのインタビューを通して、彼・彼女らの装いに対する強いこだわり、伝統衣装ではなく洋服を身に着けるヒンバの人々に対する考え、他の民族との関係性を把握することができた。
2つ目の調査は、州都オプウォでおこなった。人種のるつぼを体現したこの街では、伝統衣装を着たままスーパーで買い物をする人々を見ることができる。スーパーの周辺は様々な民族のたまり場になっており、座って観察しているだけでも面白い場所であった。ヒンバやヘレロとは全く異なる民族出身の人々に対するインタビューもおこなった。普段洋服を着ている人々は、伝統衣装を着用し続ける人々に対して尊敬や感謝に近い感情を抱いていた。
3つ目の調査は、オプウォから車で約1時間半のヘレロの村であるオチトゥンデュア村でおこなった。雇っていた通訳の出身村であり、チーフを紹介してもらった。伝統衣装であるロングドレスも着用し、その重さと暑さを実感した。見た目が全く異なるヒンバとヘレロだが、私たちは同じだと繰り返し言っていたのが印象的であった。
以上3つの調査地で得られた貴重な経験と情報をもとに、今後の研究を有益なものにしていきたい。
今回の調査では全期間にわたり通訳を雇っていたため、現地語の習得がおろそかになってしまった。基本的な発音方法は教えてもらったため、次回の渡航に向けて勉強しておく必要がある。調査地の物価も把握しておらず、村の滞在費や交通費で多めに支払ってしまった場面がある。些細なことでもわからないことは現地の知人に逐一尋ねるべきだったと痛感した。体調面では、現地の気候が合わず2回風邪をひいてしまった。喉の乾燥が原因と思われるため、次回はのど飴などを多めに持っていくべきだ。また、ナミビアの調査許可取得に関する情報が乏しく、現地到着後手続きを開始したためにかなり時間を取られてしまった。今回調査許可取得のために踏んだすべてのプロセスをまとめ、今後誰もがスムーズに手続きを進められるようにした。
来年度の博士予備論文執筆に向け、今回の反省を活かして次回の調査をより充実したものにしたい。
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