エチオピア・アムハラ州における健康観と医療実践に関する医療人類学的研究
対象とする問題の概要 エチオピア・アムハラ州の農村では2000年代以降、ヘルスセンターの設置や村への保健普及員の配置によって医療の選択肢が広がってきた。本研究の調査地であるアムハラ州エナミルト村には、徒歩圏内に看護師が常駐する政府のヘルス…
東南アジアでは、軍隊による安全保障の役割以上の政治への関与が指摘されてきた。国際社会では冷戦後の民主化の波と共に、軍隊による政治関与は減少すると見通されていた。しかしながら東南アジアでは、過去から現在まで軍による政治関与が継続して行われている。タイでは軍によるクーデターが何度も実行され、現在は軍隊が政権を掌握している。タイ軍事政権首相プラユット・チャンオーチャーは、総選挙による民政移管の実施を明言しながらも、現在でも実行されていない。
このようにタイの軍隊には、政治関与への強い権限が存在している。さらにクーデター以後は、総選挙の延期や王室関係者の政治関与などタイ国の政治には混乱が広がっている。こうした状況において、軍隊の政治関与の現状や問題点の観察は、今後行われる民政移管後のタイ社会を考察する上で重要である。
こうした背景において、タイの軍隊や民主主義についての研究は多数なされてきた。タック・チャルームティアロンは、タイのサリット体制時の軍政を研究し、サリットの政治リーダーシップを「独裁的温情主義」とし、独裁と温情主義という統治スタイルの融合とみなした。また山本博史は、タイ政治では民主主義の基本原則が通用しない事態が進行しており、選挙で選ばれた政府が理不尽な権力の介入で潰されてきたと述べている。しかし、クーデター後の軍政と民政移管に関する既存研究は少ない。
したがって本研究では、民主主義体制の議会の下での軍隊のあり方を検討し、軍隊と民政の望ましい関係性を明らかにすることを目的とする。
今回のフィールドワークでは、軍事政権下のタイ社会について調査することを目的とした。2014年から始まった今回の軍事政権による統治は渡航当時、2019年2月の総選挙をもって終了する予定であった。したがって民主政治復帰後のタイ政治を理解するための材料として、軍事政権下での王室や軍隊、国民の関係性を現地で感じ取ることに注力した。毎日テレビで放送される王室関連プログラムやニュースを視聴し、タイの抱える社会問題や国民と王室との関係性に関する知識を得た。さらに、タイ人との政治に関しての意見交換の機会を積極的に確保した。不敬罪があるにも関わらず彼らは、現在の政治体制に対する不満やタイ国に滞在しない国王への不満を口にしていた。
また軍事政権下でのタイ社会を知ると共に、今後の研究活動に向けたネットワークづくりにも力を注いだ。日本人会主催のセミナーでは、チェンライで山岳民族の職業支援を行う日本人女性の講演を伺い、彼女が学生と生活する施設に訪問した。学生の中には、バット・プラチャーチョンを持たない学生もいた。さらにクロントイスラムで活動するボランティア団体に参加し、タイに関して豊富な知識と経験を持つ方々に出会えた。
最後にフィールドワーク期間中は、タイ語の習得にも時間を費やした。今後の研究を見越すと、現地でのタイ人へのインタビューやタイ語の文献の研究は必要不可欠だと考えたからである。語学学校ではSpeaking、Writing共に全6コース学習し、自らの力で聞き取り調査や文献講読ができる語学能力を身につける第一歩となった。
今回のフィールドワークでは、語学学習の時間を十分に確保できた。それにも関わらず、期間中にタイ語を使ったインタビューや文献調査から研究データを収集することができなかった。先行研究の講読不足や自身の計画不足が原因である。したがって今後の展開としては、タイ生活の中で新たに沸いた疑問も含め、もう一度研究テーマを検討し先行研究の調査を徹底する。そして必要となるデータや会うべき特定の人物を整理する。
次回のフィールドワークでは、街頭ではなく目的のタイ人からの軍事政権に関する情報やタイ語の情報誌、新聞等から研究のもとになる資料を集める。その際には、今回のフィールドワークで得られた人脈、そして語学を活かしてより詳細な調査を実施し、民政移管後の軍隊のあり方を考察する。
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