京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 COSER Center for On-Site Education and Research 附属次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
フィールドワーク・レポート

エチオピアにおける伝統的ダンスの継承と新たな表現の創造

モーションキャプチャによる分析のための映像収録

対象とする問題の概要

 アフリカにおいて、伝統的ダンス(以下、「ダンス」と表記)は結婚式、収穫祭などコミュニティにおける冠婚葬祭の重要な場面で演じられるとともに、コミュニケーションや娯楽のツールにもなっている。エチオピアの首都アディスアベバでは、文化政策の一環として国立劇場において各民族のダンスが上演されており、近年ではレストランやホテルなどでもビジネスとして観客を楽しませるためにダンスが演じられている。
 エチオピアのダンス研究では、マーティン(Martin 1967)が初めて各民族のダンスについての比較研究に取り組んだ後、ヴァダシイ(Vadasy 1970)がダンスの記録をおこない表現の特性を分析した。遠藤(遠藤 2001)は各民族のダンスの内容と特徴にくわえ、都市部でのダンサーのプロ化やレストランなどでのダンスの上演について調査している。現在、エチオピアのダンス研究は、質、量ともに発展途上の段階にある。

研究目的

 エチオピアにおけるダンスの継承と新たな表現の創造との関連について明らかにするため、エチオピア国立劇場の伝統音楽部門およびレストラン2店舗にて調査をおこなった。国立劇場では、新演目の制作とダンスの技術について、参与観察と聞き取り調査をおこなった。レストランでは観客を楽しませるためのダンスのアレンジや、伝統的ダンスと欧米のダンスなどを融合させた新演目の制作について調査した。
 ダンスの動作を数値化して分析するために、複数のカメラで撮影し、モーションキャプチャソフト「Frame-DIAS V」(DKH 社製)をもちいてダンスを3次元のデジタルデータ化した。分析結果をふまえてダンサーへの聞き取り調査をおこない、解析データを再帰的に検証する。申請者も国立劇場のダンサーから指導を受け、より詳しくダンスの動作を分析できるようになった。

レストランでのダンスの上演

フィールドワークから得られた知見について

 国立劇場では、エチオピア南部のバスケトの人びとのダンスをもとにした新演目の制作過程について、観察調査と聞き取り調査をおこなった。ダンサーたちはガモ出身の歌手が現地で撮影してきた映像をもとに、基本動作となる3拍子のステップの演じ方を決めた後、全員の動作のタイミングを合わせたり、それぞれの立ち位置を決めたりすることによって演目を制作していた。調査者自身もダンサーからダンスを教わることをつうじて、制作過程における振り付けや演出の変遷、技術と新たな表現の創造との関係についてより詳しく把握できるようになった。
 国立劇場の演目は、ウォロ、オロモなどエチオピアの各民族を単位として制作される。各民族のダンスには4~10種類の基本動作があり、ダンサー全員でこれらの組み合わせを考えながら1つの演目を組み立てることがわかった。今回の調査では、調査者は8民族60種類の動作を見いだすことができた。これらの動作をダンサー2名に演じてもらい、複数のカメラをもちいて記録することで、帰国後に映像をもとに動作解析するための準備をおこなった。
 基本動作と演目との関係は、アマチュアのダンスグループやレストランでも同様であった。レストランなどにおいて、伝統的ダンスとコンテンポラリダンスなど西洋のダンスとを組み合わせた演目を制作する際には、それぞれの基本動作を組み合わせていた。国立劇場ではダンサー全員が参加して演目を制作していたが、アマチュアグループやレストランでは、演目の制作は振付師のみがおこなうという違いがあった。レストランでは観客と一緒に踊るなど即興性の高い状況が発生するが、そのような場合でも、基本動作をもとにした表現をおこなっていることがわかった。

反省と今後の展開

 調査期間の後半では、アディスアベバ市内の3つのアマチュアダンスグループを対象として、活動内容やダンサーたちの技術形成の過程について、聞き取り調査と基本動作の映像収録をおこなう予定であった。しかし市内での政治活動が活発化した時期と重なってしまい、予定していた調査をほとんどおこなえなかった。次回の渡航時には、アマチュアダンサーを対象に、経験年数およびプロからの指導を受けた経験の有無をもとに被験者を複数選んで基本動作の映像を収録し、国立劇場のダンサーの基本動作との比較をモーションキャプチャを用いておこないたい。

参考文献

【1】Martin.G. 1967. Dance types in Ethiopia, Journal of the International Folk Music Council Vol.19, International Folk Music Council: 23-27.
【2】Vadasy.T. 1970. Ethiopian Folk-Dance, Journal of Ethiopian Studies 8(2), Haile Sellassie I University: 119-146.
【3】遠藤保子.2001.『舞踊と社会-アフリカの舞踊を事例として』文理閣.

  • レポート:相原 進(平成29年入学)
  • 派遣先国:エチオピア連邦民主共和国
  • 渡航期間:2018年8月1日から2018年9月20日
  • キーワード:ダンス、基本動作、動作分析

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