ナミビア・ヒンバ社会における「伝統的」及び「近代的」装いの実態
対象とする問題の概要 本研究は、ナミビア北西部クネネ州(旧カオコランド)に居住するヒンバ社会の「伝統的」及び「近代的」装いを記述するものである。ヒンバはナミビアの代表的な民族であり、しばしば美化されたアフリカのアイコンとして描かれる。腰に…
エチオピア西南部の高地に住むアリの人びとは、バルチマと呼ばれる木製の3本足の椅子を日々の生活で利用している。調査対象にしたジンカ市T地区に生活するアリの人びとも、バルチマやプラスチック製椅子、アドミチャルと呼ばれる木枠とクッションで構成されている椅子など複数種類の椅子を日々の生活で利用している。
ジンカ市T地区に居住する10代~50代のアリの女性たちを対象に家事労働における椅子や道具の利用の仕方について着目し、調査することで、それらのデザインと身体動作の関係を分析し、空間の利用の仕方を明らかにすることができると考える。
エチオピア西南部の地方都市における椅子とその利用に注目し、椅子の形態的な特徴、椅子の利用場面における身体動作と空間利用との関わりやその特徴について明らかにする。
今回、得られた知見は3つである。
1つ目は、かまど(現地語でバーカbaaka(アリ語))(写真1)の形態と身体動作の関係を見出せたことである。
調査した10世帯では、異なる高さにかまどをつくっていた。かまどをつくっていた場所とその形態的特徴を観察・計測したところ、かまどは、3つの場所でつくっていたところを観察した:1.地面、2.土を盛って地面より高い位置でかまどを設置、3.10センチメートルほど地面を掘ってかまどを設置。かまどの高さは、地面を起点に-13.4~45cmだった。地面から10cm以下の場所にかまどが作られている世帯では、しゃがんだ姿勢や地面に座って調理を行っていた。その一方で地面よりも10cm以上高い位置にかまどがある世帯では、深前屈やバルチマに座って調理を行っていた。
2つ目は、10代前半の女子も家事労働に携わっていることである。調査した10世帯のうち、7世帯で10歳以下の女子が家事労働に携わっていた。彼女たちは、世帯主の姉妹や世帯の子供、世帯で扶養されている子供であった。彼女たちは、授業がない時間(シフト制のため、授業は午前もしくは午後に実施)に家事労働全体や一部を担っていた。観察した中で昼食の準備に携わっている場面が最も多かった。他方、1世帯のみで観察したが、50代の女性が家事労働に携わっていた。この女性は世帯主の妻の母親であり、家の掃除や調理などに携わり、立った状態や深前屈で作業を行っていた。
3つ目は、椅子を利用する人たちが、椅子の利用を含めて、自らの生活史を語ってくれたことである。調査した10世帯のうち、2世帯で自分の半生の中で、椅子の利用の歴史を確認した。聞き取りによると、ある世帯では、長男の名前が刻印された椅子があり、それは長男が生まれたときに購入したと説明してくれた。もう1世帯では、結婚する際に世帯主の父親が、コーヒを淹れる時に利用してほしいという希望とともに椅子を贈ってくれたと説明してくれた。
今回の渡航では、前回の予備調査と同じ地区で調査を行った。10代前半の女子から50代の女性までが家事労働に関わっていること、かまどの形態と身体動作の関係を見出せたこと、同じ作業でも人や使用する道具によって作業姿勢に相違点があることを見出した。また、インフォーマントの女性の作業に参与観察することで使用していた道具のデザインとその時の姿勢との関わりについて明らかにすることができた。今後は、エチオピア西南部の農村部に暮らす女性や都市部の年長女性も対象に含めて、自然環境や生活環境、年齢のちがいなどにも留意して、椅子の利用や作業姿勢のちがいに関するデータを収集し、姿勢がどのように規定されているのかについて検討したい。
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