京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 COSER Center for On-Site Education and Research 附属次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
フィールドワーク・レポート

「プロセス」として家を持つこと――ザンビア・ルサカのコンパウンドにおけるライフコースと居住選択――

写真1 コンパウンドの日常風景

対象とする問題の概要

 ザンビア共和国の首都ルサカでは、人口の70%が低所得者層であるとされている [UN-habitat 2023]。彼ら彼女らは、コンクリートブロックでできた壁とトタン屋根で建てられた住宅に住んでいる。そして、このような住宅が密に立ち並んだ地域が一般的にコンパウンドと呼ばれている。近年、コンパウンドでは、インフラやコレラと下痢を主とした健康・サニテーションの問題が生じており、多くのプロジェクトが為されてきた。一方で、これらのプロジェクト報告では、住民やコンパウンドにかかわる人々の社会的歴史的文脈が見過ごされがちである。それゆえ、コンパウンドの現実を捉えることが難しい。

研究目的

 本報告書では、2025年7月末から9月末までの調査より、コンパウンド住民たちがどのようにコンパウンドを捉え、どのような経緯でコンパウンドに住むことになった、あるいは現在も住んでいるのか、という点に焦点を当てる。

写真2 未完成の家。壁の地肌がむき出しになっている。

フィールドワークから得られた知見について

 筆者は、チャワマ・コンパウンドに住む42世帯に対して、居住に関する聞き取り調査を行った。筆者が行った42世帯への調査によると、持ち家世帯は平均居住年数が17年1カ月、世帯主の平均年齢が63歳である一方、貸家世帯はそれぞれ9年1カ月、46歳であった。このことから、若い世代はまず貸家に住み、年齢が上がるにつれて持ち家へと移行する傾向があることが示唆される。ある女性が将来の持ち家所有を「Process」と表現したように、住宅の所有は人生における一連のプロセスとして捉えられている。
 この「Process」を、二人の女性のライフストーリーから解釈する。一人目は35歳の女性で、貸家に住んでいる。夫の仕事の失敗を機に、姉を頼ってチャワマに生活拠点を移した。彼女は「いつか、自分の家を持ちたい」と語っており、住宅所有が将来の目標であることがわかる。二人目の70歳の女性は持ち家に住んでいる。1993年から10年間チャワマで家を借りていた彼女は、2003年に仕事のボーナスをきっかけに自分の家を建てた。これは、将来の子育てや退職後の収入減を見据えた、安定した生活を確保するための決断だった。これらの事例から、チャワマ・コンパウンドに住むことは、住宅所有という目標に向けた肯定的な選択肢であり、個々のライフコースの中に位置付けられていることが示唆される。
 さらに、この70歳の女性の事例は、住宅所有がゴールではなく、その後も「プロセス」が続くことを物語る。彼女は家を建てた後も、水道やトイレ、ソーラーパネルなどの設備を年々追加・改善し続けている。インタビュー中、「家は未完成だ」と語る彼女の言葉は、住宅所有が単なる「住む場所」の獲得ではなく、継続的な取り組みであることを示している。チャワマ・コンパウンドの住民にとって、住宅は単なる物理的な空間ではなく、個人のライフステージと密接に結びついた「プロセス」の一部であり、そのプロセスは所有後も続くことが明らかになった。

反省と今後の展開

 今回の調査報告では、持ち家と貸家という居住形態の特徴の中で、個人の移住歴を軸としたライフストーリーの位置づけについて議論を行った。すると、上記で述べた35歳の女性のように、親族ネットワークが居住選択に影響していることや、70歳女性のように、居住空間の変化やインフラ設置がその時々の個人の状況と対応して行われていることがわかる。加えて、住宅が密に立ち並ぶコンパウンドでは、居住空間も密接であり、水道やトイレといったインフラは近所の住民と共有されていることがしばしばである。今後、親族関係をはじめとするコンパウンドに住む個々人の人との繋がりや、生活の基盤でもあるインフラの社会・歴史的文脈について更に調査を行いたい。

参考文献

 UN-Habitat. 2023. Zambia Country Report Final (English).

  • レポート:江角 理佐子(2024年入学)
  • 派遣先国:ザンビア共和国
  • 渡航期間:2025年7月30日から2025年10月1日
  • キーワード:人生、居住、個人史

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