モバイル・スクウォッターと公共空間の利用に関する人類学的研究――ネパールにおける露天商を事例に――
対象とする問題の概要 都市現象の一つであるスクウォッターを対象とした研究においては、都市計画がもたらすジェントリフィケーションに関連し、彼らがいかに特定の空間を占拠し続けるかという「生きる場」の獲得過程を記述してきた。その手段として個人や…
ボツワナ共和国北部に位置するオカバンゴデルタは、世界最大の内陸デルタである。ここには、豊かな水資源を巡って多様な植物資源、そして野生動物が生息しており、ボツワナの観光資源としても重要視されている。しかし近年、世界では、人と野生動物の間では様々な軋轢が生じており(食害・直接攻撃等)、今後人と野生動物を巡ってどのような関係性が築かれるべきなのか、方向性を探る必要がある。オカバンゴデルタには、アフリカでも特に人との軋轢が大きいアフリカゾウやカバ等の大型哺乳類が多数生息しており、今後、この地域で人と野生動物の軋轢が大きくならないためにも、現状を知り、今後の方向性を探る必要がある。
本研究では、オカバンゴデルタの環境の特徴、またこの地域で現在まで築かれている人と野生動物の関係性を知り、現在オカバンゴデルタで生じている人と野生動物を巡る問題点を見つけ出すことを目的とする。
以下、今回のフィールドワークによる現地住民への聞き取り調査、並びに参与観察によって得られた知見を記す。
・オカバンゴデルタの水資源
オカバンゴデルタは、例年10月の終わり頃から雨季が始まり、翌年の5月まで続く。その間、雨は降り続ける。6月から次の雨季が来るまでの期間が乾季である。しかし近年、雨季の始まりが徐々に遅れている。一方で乾季の始まりは変わらない。また、昨年の雨季(2018年11月~2019年5月)では、特に雨量が少なく、例年乾季にも水量を維持している河川や湿地が、今年は水がないという事態が起こり、深刻な水不足に陥った。
・人の生活圏に現れる中・大型哺乳類
オカバンゴデルタ南部には小さな村や町が点在している。これらの人の生活圏には、乾季になると多種にわたる草食獣がやってくる。他の野生動物が少ないため、草が残っており、これらの草を求めてやってくるものと考えられる。また、多種にわたる肉食動物が年間を通して人の生活圏に生息している。ヤギなどの家畜を襲うことがある。
・アフリカゾウ
アフリカゾウが人を襲う事例はこれまでも少なくなく、滞在時もアフリカゾウに人が殺された事件があった。また、町の空港内にも侵入した。乾季になると、草と水を求めて人の生活圏にも現れるようになる。現地では強く恐れられており、一人で人気のない場所に行くことで、ゾウに襲われる危険性があるという強い警戒心がある。アフリカゾウが折り倒した木を焚火に利用し、糞を燃やして起きる煙が、蚊除けとして利用している(ただし、妊娠している女性にはよくない)。オカバンゴデルタには、多数のアフリカゾウが生息している。
・カバ
水があるときは活発で、なわばりに近づく人を頻繁に襲う。今年の水不足で、大量に死亡した。ある村の枯れ川には、民間でカバの保全のために維持されているプールがあり、200頭弱のカバが密集して生息していた。周囲には水不足によるカバの死骸が散見していた。
今回の調査では、現地の抱える水や植物資源を巡る野生動物の動向や、人と野生動物のあらゆる接点について知ることができた。しかし、具体的な数値としてデータを得られておらず、また聞き取りと参与観察によって得られた知見も、サンプル数としては未熟である。そのため、今後は現地の自然環境、野生動物、人との関係性の動向に関するデータを数値として収集し、またデータの信頼度を高めるためにサンプル数を確保することを意識したい。
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