京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 COSER Center for On-Site Education and Research 附属次世代型アジア・アフリカ教育研究センター
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科

フィールドワーク・レポート/インドネシア

インドネシア大規模泥炭火災地域における住民の生存戦略 /持続的泥炭管理の蹉跌を超えて

対象とする問題の概要  インドネシアは森林火災や泥炭の分解による二酸化炭素の排出を考慮すれば、世界第3位の温室効果ガス排出国となる(佐藤 2011)。泥炭湿地林の荒廃と火災は、SDGsの目標15 「陸の豊かさも守ろう」に加え、目標13 「気…

インドネシアの伝統的薬草療法ジャムウが地域社会で果たす役割について/健康増進・疾病予防・女性のライフイベントサポートの観点から

対象とする問題の概要  近年インドネシアは、急速な経済発展と生活様式の変化に伴い、生活習慣病や高齢化による慢性疾患が増加している。これらの疾患は、西洋医学だけで即座に根治しないため、先進国では、補完・代替療法(マッサージ・薬草等)を導入する…

観光によって促進される地域文化資源の再構築と変容/バンカ・ブリトゥン州の事例から

対象とする問題の概要  私は現在、インドネシアのバンカ・ブリトゥン州に着目し、観光産業が現地の地域文化資源の再構築と変容に果たす役割を研究している。同州は18世紀以降世界的な錫産地であったが、近年は枯渇してきており、錫に代わる新たな産業のニ…

現代インドネシアにおける社会変容とイスラームの知の担い手/イスラーム的市民社会論の観点から

対象とする問題の概要  インドネシアのイスラームは、人類学者Martin van Bruinessenが「保守転化」と呼んだように、民主化以後その性質を大きく変化させた。この「保守転化」は、インドネシア社会における民主化や市場化、グローバル…

タナ・トラジャの中山間地域の棚田とそれに関わる環境・文化・社会制度の研究 /棚田耕作者の生活に着目して

対象とする問題の概要  棚田とは山の斜面上や谷間の傾斜20度以上の斜面上に作られる水田のことを指す。棚田は平野が少ない中間山間地において、人々が食料を生産するために作り出した伝統的な農業形態である。しかし、棚田は一般的に耕地面積が狭い事や機…

社会のイスラーム化と政治の脱イスラーム化 /新設モスクにおけるイスラーム団体の覇権

対象とする問題の概要  私が対象とするインドネシアはムスリムが人口の88%を占める。1970年代以降、敬虔なムスリムが増加していると言われている。一方で、1998年の民主化以後の選挙結果を見ると、イスラーム系の得票率は増加傾向にない。むしろ…

インドネシア・ケイ諸島における 伝統的水産資源管理慣行“サシ”の多角的評価/漁業協力管理体制の構築を目指して

対象とする問題の概要  近年のアジア諸国では急速な経済発展に伴い、水産資源の乱獲が非常に大きな問題となっている。水産資源の持続的利用に向けた取り組み、管理体制の構築は急務であり、国の枠組みを超えて議論が行われている。北欧諸国では、ITQ(譲…

インドネシア・リアウ州における泥炭火災の特徴とその発生要因の解明

対象とする問題の概要  インドネシアでは泥炭地で起きる「泥炭火災」が深刻な問題となっている。泥炭火災とは、泥炭地で起きる火災である。泥炭地は湿地内で倒木した木が水中でほぼ分解されず、そのまま土壌に蓄えられた土地であり、大量の有機物が蓄えられ…

インドネシア中部ジャワ農村地域における共有資源管理/住民による灌漑管理とその変容

対象とする問題の概要  インドネシア政府はこれまで多種多様な農村開発プログラムを実施してきた。特にスハルト政権下では、例えば稲作農業の技術的向上を目的としたビマスプログラムのように、トップダウンによる開発政策がおこなわれてきた。しかし、こう…